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3-1 帰還…

「あんなすごい音を出されたら、誰だって開けるだろ。」 何も考えない事にしようと、話を逸らすと『音?』ジャネルは首を傾げた。 「てっきり、あんたが、苦し紛れにトビラにぶつかっているのかと思った。」 二人は顔を合わせ、笑った。 *** 「……はぁ……。何とか無事に持ってこれた。」 ぐったりしているガクの肩を持ち『ボルネがいい仕事をしてくれたな。』ボルネに餌を与えながら満足げなジャネル。 「……大剣を持ってればもっと素早く対処出来たって言ってたな。悪い……。」 『気にするな。あの場のガクの判断は、正しかった。』 「……。」 正直、ガクは全く戦力にならなかった。王族の癖に、戦闘能力に優れているなんて……「どんな王子だよ……。」 段ボールをどけながら、ひとりごち、姿を現したトビラを見つめた。 ジャネルは、公民館から持ってきた“フィンチストーン”をトビラの方に向けた。そして、首から下げている小さな“フィンチストーン”も掲げた。 暫く反応がなく焦り始めた頃、ようやくトビラがうっすらと光り始めた。 「あっ。」 ガクはホッとしながら、光を浴びているジャネルの横顔を見た。美しく光を放つその中に、美しい顔をした男が微笑んでいる。 『ガクのお陰だ。ありがとう。これで、国に帰れそうだ。』 複雑な表情を浮かべながらガクはこの不思議な気持ちを胸に秘めていた。 ジャネルは、ずり落ちているガクの眼鏡を元の位置に戻すと、一歩下がり、彼を見下した。 『君は、実に不思議な男だな。』 「あんたは、実に不思議な王様だ。」  二人は、声をそろえて笑った。そしてガクは、大剣ブルーソードを返した。ジャネルは、懐かしむような目でそれに手を伸ばした。 「忘れたら大変だ。」 『そうだな。』 ガクは、改めてジャネルと向き合った。 「…ホントにお別れだな。」 ガクは、今にも泣き出しそうな声で言った。下を向き瞬きをした瞬間、涙がこぼれた。どうして涙が出るのか分からなかった。それを見たジャネルは、大剣を背中に担ぎながら一歩彼に近づいた。 「泣くな。お前に泣かれると胸が痛む。」 親指の腹で、ガクの頬に流れた涙を撫でながら、甘い声をだした。 『トビラは消えて無くなってしまうだろうが、僕の存在は残るだろう…君のここに。』ジャネルはそう言って自分の胸に手を当てにっこり笑った。 その言葉と動きに見惚れていると、公民館から手に入れた“フィンチストーン”の光が弱まってきている事に気が付いた。 「ジャネル、“フィンチストーン”の光が弱まってきてる。」 ジャネルは最後にもう一歩ガクに近づき、彼を抱き寄せるとキスをした。そして、トビラの方に駆け寄り振り返った。 ガクの側にいたボルネは、上手にジャネルの肩に止まった。 ジャネルは『いつかまたどこかで。』とテンガロンハットを脱ぎ頭を下げた。 その姿が最後だった。 目映い光が倉庫内を覆うと、ガクは目を閉じた。再び目を開けた時には、いつもと変わらない在庫室の姿があったが、そこにはあの開かずのトビラはなくなっていた。 ゆっくりと立ちあがり、トビラのあった壁に手をついて、小さく溜息をつきながら胸に手を当てた。 「これって。」 手に触れたそこには、ジャネルが身につけていた“フィンチストーン”があった。 「いつか、また……どこかで、か……。二度目はないって言ってたやつがよく言う……。」 *** 異空の地・アレンバード テンガロンハットを目深に被り、真っ黒いローブを身にまとっている男は、アレンバードの地に足を踏み入れた。その傍らには立派なタカが、毛繕いをしている。後ろから女の子と小柄な男が、駆け寄って来た。 男は、後ろを振り返りながら、ローブを脱ぎ捨てテンガロンハットを空高く上げた。 『わっ!!ジャネル様!その格好素敵です!』 男がローブの下に着ていたのは、不思議な国で出会った冴えない美容師が、コーディネイトしてくれた服だった。 『ジャネル様。その格好、意外と似合っていますぞ。』 小柄な男は、男の耳元で囁いた。 男は、空を見上げ、彼を思い出しながら、笑顔で空に手を上げた。 『いつか、またどこかで。』 ーENDー
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