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第2話

 突き刺さった剣を抜き、相手を睨みつけて向かっていく。 「良い目だ」  力がぶつかり合う。 「くっ」  徐々に押され、力負けしたロシェは地面へと尻もちをつく格好だ。 「はぁ、はぁ、強ぇ……」 「ロシェは粗削りだな」  手を掴み起こしてくれる。 「独学だからな」 「それならば、俺が教えようか?」 「いいのか?」  もっと強くなれればドニが薬草を採る時に安心して作業が出来るだろう。 「君達にはシリルの為に遊びに来て欲しいから」 「あぁ、そういう事か」  それが目的。剣はついでにという事か。ファブリスにとってシリルが優先順位なのだ。  それはロシェがドニを想う気持ちと何処か似ていて、少しだけ親近感がわく。 「師匠と呼んだ方が良いか?」 「そんな風に呼ばれると照れるから、今まで通りで良い」  どこか楽しそうなファブリスと目が合い、ロシェはハッとなり顔を背ける。見られるのは好きじゃない。  ファブリスはため息をつき、 「では、もう一度」  と剣を構えた。 「あぁ」  剣を構えて彼に向かう。 「ロシェ、やみくもに突っ込んでくるな。相手を良く見て、……そうだ」 「くっ、やぁ!」  互いの剣がぶつかり合い、そしてうまくかわされて倒れ込む。 「さっきよりも断然に良いぞ」 「だぁ、疲れた。少し休憩させろ」  ドニとシリルも二人の剣技をテラスで眺めていた。そこへと向かい空いた椅子に腰を下ろす。 「お茶を用意してこよう」  剣を鞘に戻しそれを外壁に立てかける。  キッチンへと向かう途中でドニと目が合い、そしてシリルの頭を撫でていく。 「お疲れ様」 「アイツ、すげぇ腕だわ」  すごく楽しかった。それが顔に出ているか、ドニが嬉しそうに自分を見ていて、それに気が付いて顔を背ける。 「凄い迫力だった。ね、シリル」 「あぁ。久しぶりにファブリスの剣術を見た」 「そうだったな」  トレイにお茶と焼き菓子をのせてファブリスが言う。 「うわぁ、美味しそう」  パウンドケーキを置き切り分ける。ドニもロシェも甘いものは好きだ。 「ファブリスの手作りだ」 「……なんでも出来るんだな」  流石に出来過ぎだろうと少し引いてしまう。  だが、二人きりで暮らしているのだから否応にも出来るようになってしまうのかもしれない。  その思いはどうやらシリルには伝わってなさそうで、流石に少しだけ同情してしまう。 「美味しい」  ドニが頬を押さえて蕩けそうな表情を浮かべる。  ロシェもひとくち食べれば、口の中に優しい味が広がる。 「口に合ったか?」  またじっと見つめられて居心地が悪い。 「美味いよ」  ファブリスとは目を合わせず、食べる方へと意識を集中させた。

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