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第58話

 支倉恭平が所属する事務所は、支倉の父親である支倉正親(まさちか)が運営する最大手プロダクションだということは有名だ。その事務所前にも多くの報道陣が詰めかけている。  正親がヤクザと関わりがあるという衝撃的な内容のためにだ。報道陣から真相を求める沢山の声が上がっている。  そして恭平の弟である支倉凌平は、表舞台の兄とは正反対に裏の世界で暗躍し、薬を売り捌いたりと犯罪に手を染めているとも。正親との関わりがあるヤクザとの関連も、この先の捜査で明るみになるだろうと報じている。 「なんで急にこんな事が出回り始めたんでしょうかね」  村上が呟くのを佑月は苦笑いを混じえて首を僅かに傾げながらも、何か妙な感覚に囚われていた。それが何なのかは全く分からない。〝須藤〟と同じで肝心な部分がすっぽりと抜け落ちている。そんな感覚だった。 「あと1週間ほどすれば、部屋から出てもいいと先生の許可もらったので、外の空気吸いに行きましょう。ずっと部屋じゃ気分も滅入るでしょうし」 「はい。ありがとうございます」  佑月はホッと安堵の笑みを村上へと向けた。村上の顔が少し赤いことが気になったが、直ぐにリハビリを始めたことで佑月は開きかけた口を閉じた。  歳が近いこともあり、退屈な入院生活の中で村上と過ごす時間がリラックスでき、佑月にとっては唯一の楽しい時間になっている事は変わりなかった。  
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