151 / 316

第153話

「俺さ、親に誰かを紹介したのは初めてなんだ。むちゃくちゃ緊張するもんだな」 ふうっと溜息を吐いてこれ以上無理ってくらい引き寄せる。緊張してたからかな、ずっと手を繋いでたのは。 「僕も緊張しました…お父様…どんな厳格な方だろうってビビってましたよ」 「そうだよな、あんな親父は初めて見たよ。余程いい金儲けを思い付いたんだろうな」 金儲けしか能のない男…って言っていた。僕には検討もつかないことなんだろうけど、りゅうさんの為になるならなんだっていい。このまま泣き寝入りは嫌だ。辛い想いは心も身体もなんだ。好きな人の前で暴行される辛さは計り知れない。 「隼人は何も考えるな。りゅうの事は美里さんの看護と親父に任せておけばいいから」 いくら辛さを共有しようとしたってできるもんじゃない。これからりゅうさんの為を考えたほうがいいのはわかってる。高嶺さんもきっと同じだと様子を見ればわかる。 「そうですね。りゅうさんが帰ってきて僕達が出来ることを考えましょう」 「隼人のそうゆうところが堪らなく好きだよ。芯が強くて人の痛みがわかる。魅力的だな」 僕は高嶺さんのその歯の浮くような言葉にいつも戸惑うんだ。僕とは違う世界の人なんだって思ってしまう。 一般市民の僕には恥ずかしくなる言葉なんだから。魅力的なんて普段使わない。せいぜい素敵ぐらいだよ。 身体を浮かして至近距離から瞳を合わせるとうん?と首を傾げて尋ねてくる。 「高嶺さんも魅力的ですよ。とってもモテるから心配です。魅力的な人には色んな人が寄ってきますから。罪ですよね、魅力的な人って」 パチパチと瞬きをして僕を伺う。その仕草が可愛くてクスッと笑った。 「魅力的って言われたら恥ずかしいです。そんなリアクションに困るようなこと言わないで…」 「魅力的は魅力的だろう。隼人にぴったりの言葉だよ。堪らなく魅力的だよ」 ああ、ダメだ。この人には日常会話に出てくる言葉なんだろうな。 「もういいです。じゃんじゃん言っちゃってください。僕はそれに慣れるしかない…」 「ははっ、そうだな。慣れてもらおう。俺の可愛い人はシャイだから、可愛くて堪らないよ」 「あーもう、やめてください!恥ずかしいです…」 耳を塞ごうとして両手を取られた。 「ちゃんと聞いて。俺がどれだけ隼人のことを想ってるか。もう親にも紹介したし、堂々とここで暮らせる。この際、ここに越して来ないか?」 そう言われて、ここにいるのは期間限定だったことを思い出した。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!