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第246話

僕の手を握りしめたままソファに身体を預けた琥太郎さんは、目を閉じたまま何も話さない。その様子から僕も同じようにソファにもたれた。 今日は長い1日だった。もう日付けも大きく変わっている。疲れた様子の琥太郎さんにお風呂の準備をしたい。ソワソワと手を離そうとすると力がこもり、動かせなくなる。 「隼人…綺麗だったな…」 ぼそりと呟いた琥太郎さんを横目で見ても、まだ目を閉じていた。何を考えているんだろうとじっと見つめる。その横顔はとても綺麗で、この顔を僕はよく見つめている。早く目が覚めた時、飽きることもなく何時間でも見ていられる大好きな横顔。 琥太郎さんはポケットからスマホを取り出して顔に運ぶ。少し開いた目で画面を操作した。そして僕にその画面を向けた。 そこにはさっきまでのジュンの姿が写っている。会場でりゅうさんと少し離れた時の画像だろうか、見覚えのある背景とその姿を見入った。自分の姿だとは到底思えない女性が写っている。 「俺さ、隼人がいるのに…この人を見た時、見惚れたんだ」 衝撃の言葉にその画像の女性を睨みつけた。 「すごく綺麗で…鼓動が早くなって、美陽のことも忘れてそばに行こうとした。これが隼人じゃなかったら…俺…どうなってたんだろうって…」 それは…この人に見惚れてどうにかしようとしたってこと? 何を言っていいのか分からずその横顔から視線を外した。もし僕じゃなかったら?琥太郎さんはその人に声をかけていたんだろうか。りゅうさんといたから変なことはしないだろうけど、僕の時のように…そう思うと怖くてゾワゾワと何かが身体を走った。
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