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「リカちゃんは今すぐ眼医者に行った方がいいと思う」
「この前コンタクト作りに行ったところ。少しだけ視力が下がってたけど、他は何も問題なし」
「お前のこと問題なしって言うなんて、そいつが医者として問題ある」
「慧君はきたんとした日本語を喋ろうね」
何が楽しいのかクスクスと笑いながら俺の耳を舐めたり食んだりするリカちゃん。俺も健全なオトコノコだから、いつまでもソレを続けられると困る。精神上もそうだけれど、身体的にピンチだ。ゆるゆるのスウェットの中で、持ち主の俺よりも元気な俺の分身がソワソワし始めた。
そのソワソワに気づかないリカちゃんではない。
「慧君のえっち。腰が揺れてる」
えっちなのはお前だって声にしたはずが音にならなくて、その代わりに漏れた息の熱さに我ながらびびった。服の上から俺のモノを触るリカちゃんの指が、俺の声を奪った代わりに体温をグッと上げてくる。
「…………ッ、急に触んな」
「触る時は急なもんじゃない?いちいち、今から触るって宣言してから触れたりしないでしょ。それとも」
目は口ほどにものを言うって言葉があるけれど、リカちゃんの場合は目だけじゃ済まない。こうして触ってくる指とか、それから首筋に当てられている唇も同じ。リカちゃんがこれからどうしたいのか、どうするつもりなのかが伝わってきて、ゴクリと喉が鳴った。
「ちょっと触られただけで気持ちよくなった?」
否定しようと思ったのに、ふぅ、と細い吐息が首筋をくすぐる。部屋着の上から俺のモノを握ったリカちゃんが、その左手をゆっくりと動かした。
「な、ってないし。自意識過剰か」
答えた自分の声が震えていたのは、気づかないことにした。
「そう?その割に慧君のここは大きくなってきたけど」
「触られたら、誰でもなる……って、やめっ、先は……んんっ」
「へぇ。慧君は触られたら、どんな場所で誰が相手でも、いつでもこうなるんだ?」
「誰もそんなこと言ってな……うっ、ァ」
言い切る前に先端をグリッと抉られた。跳ねた語尾が寝室に響く。
「ふ、ぅ……んぁ」
「えっろい声。こんなにえっちだと、心配で心配で夜も眠れなくなりそう」
「お前っ……今日、いつもより、うっとうしい」
「そりゃあ慧君と仲直りできたんだから舞い上がっちゃうのは当然」
ふは、と笑ったリカちゃんが服の中へと手を入れてくる。俺のモノを直に握りながら、唇は首筋に当てたまま。なんて器用なやつなんだろう。その器用さは別のことに使えよバカ。
「それなのに慧君が触られたら誰が相手でも勃つなんて言うから…………ねぇ?」
言葉で耳を責められ、指で身体を責められる。怒られてるのかと思ってリカちゃんを見ても、そんな様子はない。
「誰、で、もの意味が違ッ、や……ぃ、あっ」
ぐりぐりと鈴口を押されて腰が浮く。でもリカちゃんがすぐ傍にいるから逃げられなくて、中途半端に浮いた身体はすぐにベッドへと戻される。
「離せ、離せよっ」
先っぽにあったリカちゃんの指が、つつ、と裏筋を通って根元の方へと移動する。
触れられるだけで堪らなくなってしまう俺は、リカちゃんの指の動きに合わせて「ふ、ふ」と短い息を吐いてしまった。悔しいけど、バカみたいだけど、気持ち良さには勝てない。
「とりあえず、ここからかな」
きゅ、とリカちゃんが握ったのは俺のモノの根元。血が集まってきて熱くなったそこを、輪っかにした指で締めつける。
「や、やだって。早く手どけろバカ!」
そんなとこを締めつけられたら出すものも出せなくなっちゃう。出したいのに出せないあの感覚は苦しくて辛くて、情けなくてもどかしい。出したい出したいって本能が身体の中で暴れて、涙まで出ちゃうぐらいだ。
その感覚を知っているから否定したくて首を振ろうとするけど、忘れてた。俺のすぐ傍にはリカちゃんがいて、俺に自由なんてないってことを。
「……リカ、ちゃん」
名前を呼べば返ってきた「なあに?」の声はひどく甘ったるい。
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