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第二十四話(2)

「おまえ――本当に、あのカイ・アイゼンシュミットか?」 「……」  ジークフリートはカイにかけた外套を掴んだまま、重々しくカイに尋ねる。カイはそんなジークフリートをじっと見つめ……ふ、と笑う。 「ええ、あのカイ・アイゼンシュミットですよ、ジークフリート王子。貴方が惨い殺し方をしたアイゼンシュミット一家の、長男です」 「……、その目の色、卓越した魔術の能力……たしかに、カイ・アイゼンシュミットだと信じるには十分な証拠だ。でも、――ありえない。おまえが、カイ・アイゼンシュミットだなんて、」 「どうして?」 「あの状況で逃亡したことも、――それに、あんなことをされてこうして平然と俺と話しているのも、ありえないだろ! 俺のことを憎んでいないのか!」 「憎んでないよ。憎んでるように見える?」 「……っ」  ジークフリートが顔を歪める。  ジークフリートがアイゼンシュミット一家に対して行ったこと――それは、あまりにも惨たらしいこと。  アイゼンシュミット家――彼らは、小さな魔術師の家系だ。国のはずれで、人目につかずにひっそりと暮らしていた。しかしその歴史は深く、実はアイゼンシュミットの魔術の祖・ゼロという男は、魔術が禁じられていなかった時代にクラインシュタイン家に宮廷魔術師として仕えていたという過去がある。クラインシュタイン家とアイゼンシュミット家はそうした歴史的な繋がりがあるのだが、現国王はアイゼンシュミット家を疎んでいた。……というのも、アイゼンシュミットの祖・ゼロは七十二体の悪魔と契約した化物として有名な魔術師だった。そんな化物の彼が仕えたからこそ、当時の皇帝・オスヴァルト・クラインシュタインの権力は絶対にまで引き上げられたのだが……悪魔の主として名をはせたゼロの血を引くアイゼンシュミット家との繋がりを、現国王は断ちたかったのだ。  そんな一方的な断絶を求めていた現国王は、アイゼンシュミット家をこの世から消そうと目論んだ。アイゼンシュミット家に「魔術を使って村を恐怖に陥れた」と冤罪を被せ、死刑にしたのだ。もちろんアイゼンシュミット家はそんなことはしていなかったし、むしろ魔術など一切使っていなかった。魔術師の家系ではあったが、法を守り魔術を使わず生きてきたのである。  しかし、アイゼンシュミット家は、処刑となった。それも――「法を破り魔術を使った者への仕打ち」の見せしめとして、より残酷な方法で。  アイゼンシュミット家の処刑を行ったのは――当時8歳だった、ジークフリート 。ジークフリートは「処刑人」として、処刑台に立った。顔を隠し、身分を隠し。処刑をするために魔術を使う、特別な雇われ魔術師に扮してアイゼンシュミット一家の処刑人となった。  アイゼンシュミット一家は、処刑台に磔にされ、呪いをかけられた。体の構造をめちゃくちゃに狂わせる呪いである。祖父は、骨を大量の太い針に変形させられ、全身を内側から骨に貫かれて死亡。母は、内臓を液体に変えられ、穴という穴から液体と化した内臓を流して死亡。父は、血液を酸に変質させられ、体を溶かされ死亡。姉は、無理やり体の構造をカエルに変更され、激しい拒絶反応を起こし死亡。そしてカイは――身体中の水分を毒に変えられた。アイゼンシュミット一家の酷い死に様は、王都の者たちにエンターテイメントとして笑われた。たしかに魔術を使った者の末路として強烈な殺され方となったのだが、魔術を使うつもりもなかった王都の者にとっては、ただの見世物でしかなかった。アイゼンシュミット一家は、凄まじい苦しみと屈辱の中、笑われながら死んだのだ。
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