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付き纏う王子②

扉がノックされ開け放たれた先には、固い表情のトモユキが立っている。 扉近くにいるメシアに近付き、耳元で慌てたように告げるトモユキは焦りを隠しもしない。 「メシア。朝の水浴び、まだだよな? 急いで行っておいで。裏から出て行くんだよ。……今日の仕事に、第二王子のシヴァ様が同行することになった。案内役にメシアを指名している。大丈夫、か?」 心配そうに問うトモユキにメシアは俯くことしか出来なかった。 今は会いたくない人間ではあっても、断った時のトモユキへの仕打ちが怖い。 「だい、じょ、う、ぶ。昨日、会ったから。……行って、くるね。王子様は、向こうの小屋?」 奴隷にも階級があり、階級毎に小屋を与えられている。 他にも、奴隷を管理、監視する人間の小屋があり、外部からの受付はその小屋で行っていた。 「ああ。取り敢えず引き止めて貰っているけど、直ぐにでもこっちに来そうな勢いだから。水浴びに行く時間を貰えないと困るし急いで行ってきて」 切羽詰まったトモユキに頷き小屋を一歩出たところでメシアの足が止まる。 悠然と歩いて来る威圧感のある男に見覚えがあった。 会いたくないと思うのに、姿を見ると胸が震えてしまう。 恐怖なのかも、歓喜なのかも、今のメシアには解らない。 メシアの前で立ち止まった青年は少年を見下ろし僅かに目を細めた。 「よく眠れたか、メシア。迎えに来てやった。行くぞ」 シヴァを見上げたまま動かない少年の片腕を掴んだ青年に、メシアは抵抗するように腕を反対に引く。 「忘れ、ろ、っ、て、言っただろ。何しに、来たんだよ。迷惑だ。僕の前から消えろ」 シヴァの温もりに触れるのが怖くて乱暴に腕を捩ったが解放されることはなかった。 「王子。彼は身支度がまだですので、お待ち頂きたく存じます」 そっ、とメシアの肩に手が置かれたことにメシアの身体はビクつくが、後ろからトモユキの声がしたことで手の主がトモユキだと察し、強張りを解いていく。 か細く「トモ君」と縋る声を絞り出す。 「……森の泉に行くんだろ?」 シヴァの瞳が面白くないとトモユキを睨んだ。 返答を聞くこともなく青年はメシアを肩に担ぎ上げ歩き出してしまう。 「なっ、っ、おろ、っ、せ、っ! トモく、ん! たすけ、て」 急に足が宙に浮き、体躯がシヴァに触れている恐怖に思わずトモユキに向かい手を伸ばしていた。 「俺を拒否できる立場でないと昨日教えてやったのに、もう忘れたか?」 それを遮るようにシヴァの低い声が降り掛かる。 伸ばした手を引っ込め青年の肩口を掴むことしかメシアには出来なかった。
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