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白昼夢

「うっわ…寒っ」 「ホンマやなー。東京ナメとったわ」 「もうこっち来てだいぶ経ってんじゃねーの?」 「んー、どやったかな。もう忘れた」 ある真冬の深夜ーー。 薄っすらと雪が積もった道を、俺はあの人と並んで歩いていた。 立ち並ぶ電飾看板が、昼と錯覚させるほどに煌々と輝いていた。 「蒼」 「ん?」 「そこで立ちションしてくから先行っといて」 「は?なんでさっきコンビニ寄った時に行かねーんだよ」 「今したなったんやからしゃあないやろ」 「あっそ。早く来いよなー」 俺がそう言った時には、あの人の姿は雑居ビルの隙間に消えていた。 「つか綺麗な顔して立ちションとか言うなよ…」 小さく呟いて一歩を踏み出したその時、どさりと何かが落ちたような音がして振り返ると、あの人が入って行った路地裏から背の高い人物が飛び出してきた。 黒い帽子に黒いコートを纏ったまるで影のようなその人物は、俺に気づいて慌てた様子で反対方向へと走り去った。 嫌な予感がした。 俺は来た道を戻り、あの人の元へと走った。 人通りのない路地裏には思いのほか積雪があり、俺は足をとられながらも必死で前に進んだ。 積もった雪の上残っていたのは、黒いコートの人物とあの人の足跡だけだった。 吐き出した白い息が、暗闇を漂っては消えていった。
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