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9-ヤンキー淫魔男子と志摩先生、回想す

「あいつ何やってんだ」 いかにクっソおばかな私立学校といえどもちゃーんと実施される定期考査。 午前中に本日のテストは滞りなく終了して全校生徒はすでに帰宅し、早速取りかかった採点の息抜きがてら、缶コーヒーを買いに一階の自販機コーナーへ向かっていた志摩は階段の踊り場で立ち止まった。 社会科担当の眼鏡教師が窓越しに見つめる先は隣接する校舎の屋上だった。 立ち入り禁止であるはずの場所に生徒がいた。 しかも手摺りの上に立っていた。 面倒くさがり屋でドライな性格の志摩のことだ、見なかったことにして平然と缶コーヒーを買いにいく……かと思いきや。 ぐるりと方向転換、二段飛ばしで下りてきたばかりの階段を駆け上がった。 途中、居合わせた教師数人に緊急事態であることを端的に早口に告げ、彼らの驚きやら焦りやらを背中で聞き流して渡り廊下を突っ走り、再び階段を駆け上がった。 最上階の突き当たり、普段はロックされているアルミ扉が細く開かれていた。 山岳部顧問の実力発揮、全速力疾走に特に息を乱すでもない志摩は速度を一切緩めず屋上へ駆け込んだ。 開けた視界。 穏やかに晴れ渡った午後の空の下、鉄屑や砂塵で散らかった立ち入り禁止区域。 窓越しに遠目に見つけた光景と同じく手摺りに立ったままでいる生徒。 志摩の視線の先で、屋上の向こう側へ、落ちた…………。 「どっきり大成功」 下手すれば自分まで落下しかねない勢いで手摺りから大きく身を乗り出した志摩は呆気にとられていた。 背に生やした黒い翼を緩やかに羽ばたかせて平然と飛んでいる淫魔がそこにいた。 咄嗟に空中へ差し伸べた志摩の片手をせせら笑う奴が。 「濡宇朗……」 勢いの余り外れた眼鏡を空中でキャッチした濡宇朗は硬直している志摩にかけてやると耳元で囁きかけた。 「かっこわる、志摩先生」
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