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第24話

そろそろ帰ろうということになって、志乃に連絡を入れた。そうするとすぐに迎えが来た。 「西村も送る。乗れ」 「なんか、見るからに高級車だから乗るのに緊張するな······」 「別に汚してもいいから、早くしろ」 「はーい」 志乃の言葉に花楓も一緒に車に乗り、花楓の家まで向かう。 「梓、ちゃんと聞くのよ」 「うん。ありがとう」 車から花楓が降りる時に、コソッと言われて大きく頷いた。手を振って花楓が家に入るのを見てから、俺達も家に向かった。 「楽しかったのか?」 「うん」 「よかったな」 「······志乃、帰ったら聞きたいことがある」 「あ?帰ったら?今じゃ駄目なのか?」 「···うん。帰ったら」 ぐっと拳を握って、勇気を奮い立たせる。 ただ1つのことを聞くだけなのに、こんなにも緊張する。 「梓?」 「何···?」 「···いや······」 もし本当に婚約者がいたらどうしよう。 今その人は何をしていて、俺と志乃が一緒にいることをどう思ってるんだろう。 もしかしたら何も知らないかもしれない。そう考えると申し訳なくすら感じてしまう。 家に着くと心臓がバクバクとうるさく鳴っていて、手を洗い、煙草を吸ってる志乃をみて、心に雲が広がっていく。 「話って何だ」 煙草の火を消した志乃が俺を見てそう言った。 俺は1人ソファーに座って、じっと志乃を見た。 「今日······たまたま、街で志乃の事を聞いたんだ。」 「俺の事?···この街は本当、他人の話をするのが大好きだな。······で、何を聞いた。」 ぐっと拳に力を入れる。 「志乃の······婚約者のこと。」 そう言うと志乃の瞳がグラっと揺れて、目を見開き、気まずそうに視線を逸らす。 あ、本当のことだったんだ。 「······最近店に来てくれないって。婚約者がいるっていうのは聞いていたけどって」 「···昔の話だ」 「全部終わってるの?相手の人は?納得してくれてる?」 「··················」 黙ってしまった志乃。それが示す意味が俺の感じていた不安を膨張させた。 「何も知らなかった俺も悪いけど、志乃ってそういう恋愛絡みが多いよね」 「······整理するのが苦手なんだよ」 「目の前の事だけ見るのやめたら?」 「そんなことは分かってる」 イラッとしたみたいで、志乃の口調が厳しくなった。それから黙っていると、チッと舌打ちが聞こえてきて、志乃はリビングから出て書斎に行ってしまった。

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