207 / 211

「ありがとう」

「日向さん、明日は着付けとメイクと髪、やってもらってもいいですか?」 「構いませんが、いいんですか?俺のやり方でセットしても」 「久しぶりに日向さんにしてもらいたくて」 照れ笑いを浮かべ「任せろ」と言った日向に「ありがとうございます」と深々頭を下げた。 「永。ほら、買ってきたぞ」 縣が箱を片手に部屋へ入ってきた。 永が頼んだもの。とある評判の有る店のシュークリームと一枚のクッキーだった。 「女子だらけの中買いに行かせやがって。 エロ本買うより恥ずかしかったぞ」 「すいませんでした。じゃあ、はい。どうぞ」 永はクッキーだけ取りそのまま箱を縣に渡す。 「オレ、これだけでいいですから。縣さんはシュークリーム食べてください」 「?」 「縣さん、甘いの好きですよね?だからどうぞ」 箱には大きめのシュークリームが2個。 「日向さんと分けてください」 「………まぁ、嫌いじゃねーけど…」 「暑い中、ありがとうございました」 深々と頭を下げた。 この「ありがとう」には「今まで」という言葉が先に付く。 そんな想いで日向にも縣にも伝えた言葉だった。 守らなきゃ。 守る為に尾田切の意見を受け入れると、葛藤しながら決めた。 まだ葛藤は収まらない。 何日も考えて、傷ついて、泣きそうになって、苦しくて、頭と胸と全身が痛くなるくらい考えた。 去る日は尾田切が決めた通りの日時。 行き先はここよりずっと遠く離れた新居となる場所。 不自然無く行動する。 絶対に泣かない。 泣くのはせめて、去ってからだ。 ……………もう、何日も無い。 ────────── ──── ── ─ 「や…っ、だぁ……、もっと…」 「………俺は平気だけどよ、お前そろそろ限界じゃねーのか?」 深夜の褥に甘い声と露に濡れた音が響く。 自分で何度達したか覚えていない。隼人と繋がる前から達してはいたが…。 身も心も溶けて蕩けて理性など忘却の彼方だ。 ただ、もう隼人とこんなことはできないから。傍にいられないから。という「最後」を前提とした焦燥感しか残っていない。 「………んっ…ぁ……」 動かない隼人に焦れた永は、自ら腰を動かして乱れる。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!