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第209話・大切な…

去る日までの数日間、いつも通りに過ごした。 隼人がどことなく気を回してきたがいつもの様子にしつこく聞き出そうとはしなかった。 元気なテンションでいることも引っ掛かりはしているようだったが、事態を見守るだけにしたようだ。 組員達の輪に自ら入り、教わり、発見し、笑う。 みんな、姐としての永しか知らないのだと分かっていても楽しかった。 顔を整形させるというのは本当なのだろうか。 どれくらい似せられるものなのか。 相手の女は嫌だろうが、この顔を覚えられた今、本当にそっくりでないと困る。髪も同じくらいでないと。 組員達との関わり合いもこのまま引き継ぐくらい変わってはいけないものだ。 大丈夫なのかと考えてしまうが、自分はもう心配する立場ではなくなる、と割り切るしかなかった。 ヤクザと出会い、仕事で“姐”をして。 隼人を好きになって、好きになってもらって。 妊娠騒動なんてこともあった。 色々あった。 立場が立場とはいえ、みんなに大事にしてもらった。 何年にも感じられるくらい濃くて長い、けど一瞬の時間。 自分には勿体無いくらいの大切な時間。 自分が少しでも変われた大切な場所。人達。 そして、一番大切な……、 「隼人さん、おはようございます」 恋人。 これから先、彼以外に恋人と呼べる相手を作れる自信が無い。
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