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第8話

「えっ、あっ」  固まった雅之の反応に、顔を青ざめ、言葉を探すように淳は目をさ迷わせた。  その表情に気がついた雅之はふっと小さく笑い、子供をあやすように腕で頭を抱き寄せ、そこに頬を寄せる。 「いや、男の子だもんね。経験はあるよね。でもこっちは初めてなんだ」  固く閉ざされた蕾を指先で何度も撫でると、淳はぎゅっと雅之の腕にしがみついてくる。その必死な様子が可愛くて、雅之は額や頬やこめかみに幾度も口付けていった。  すると少し伏せられていた瞼が持ち上がり、じっと雅之を見つめる。その視線に気づいた雅之は高まった体温とともに、ほんのり色づいていた淳の唇に口付けた。  唾液が口内で混ざり合い、くちゅくちゅくと小さな音が響く。一生懸命に舌を絡ませてくる淳が愛おしくなって、雅之は何度もそれを吸い上げ、舌裏を擦り反応を楽しんだ。 「高遠さん、なんか……慣れてる?」 「え?」  テーブルの下にある引き出しを雅之が漁っていると、ふいに小さな囁きに似た声が聞こえてきた。その声に振り返ると視線が真っ直ぐにぶつかり合い、淳は慌てて目を伏せる。 「ん、一応勉強はした」 「えっ」 「君のこと想像した時に、どうすれば気持ちいいのかな、とか?」  ようやく引き出しから、軟膏を探し当てた雅之はそれを持ち上げて、淳を見つめる。するとその視線に、伏せられていた瞼がゆるりと持ち上がり、潤んだ瞳が真っ直ぐに見つめ返してきた。。 「ねぇ、その目……誘われてるようにしか見えない」 「そう、思ってくれても、いいです」 「淳くん、僕のこと好き?」  試すような雅之の言葉に、淳の視線は何度も空を泳ぐけれど、しばらくすると下唇をきゅっと噛み、顔を上げた。 「好きです」 「じゃぁ、このまま君を僕のものにしていい?」 「……はい」  囁きにも似た小さな声だったけれど、雅之はその言葉は聞き逃さなかった。食らいつくように淳の唇に口付けて、再び艶めかしい姿態に溺れていく。

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