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第19話 心に灯る火(4)

「おいしいって言いながら食べてる、宏武は可愛いね」 「……っ、そんなに見てないであんたも食べたらどうだ」 「うん、いただきます」  柔らかな笑みを浮かべて、目を細めるリュウはとても幸せそうだ。  そんな顔で見つめられると、どうしたらいいかわからなくなる。けれど気がつけば、彼をじっと見つめていた。  少し目を伏せて、スプーンを口に運ぶ仕草や、オムライスを咀嚼して飲み込むたび上下する喉元。  そんなところを見つめては、胸をドキドキとさせる。彼は見目がいいし、所作が綺麗だから、つい見とれてしまう。 「そういえば、リュウは箸の使い方なんて誰に習ったんだ?」 「メメ、んーと、おばあさん教えてくれた。宏武と同じ日本の人」 「ふぅん、おばあさんが日本人ってことは、リュウはクォーターなのか?」  日本人のおばあさんの血が強いのだろうか。リュウはどちらかといえば東洋よりの顔立ちをしている。  造形の整ったところを見ると、純日本人といった感じではないけれど、親しみのある顔立ちだ。 「それにしても聞き取りは得意なのに、話すのが苦手なんて珍しいな」 「……マモンあんまり日本、好きじゃない」  首を傾げた自分に、リュウは少し寂しげな目をして俯いた。リュウが日本語をあまり話せないのは、母親に使うことを禁じられていたから、なのだろうか。  しかしそれ以上、深い話までするのはためらわれて、自分も彼と同じように口をつぐんでしまった。  そのままなんとなく気まずい雰囲気が流れて、二人でただ黙ったままオムライスを食べた。  それはすごくおいしいのに、少し味気なく感じてしまう。俯いて浮かない顔をする彼は初めて会った時のようで、なんだか落ち着かない気持ちになった。

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