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第19話 有真side

「おやすみ佐奈ちゃん」 佐奈が完全に眠りに落ちた頃、佐奈の髪の毛を撫でながら有真はそう言った。 * 神崎有真 20歳で大学2年生。 幼い頃から家の為に勉強やら習い事やらでたくさんの時間を潰してきた…という跡取り息子のありがちな生活は送ってきたことはない。 父も母も厳しいところはあったけれど、俺を教育に縛り付けるほどではなかった。 むしろ俺の意見をよく尊重してくれている。 俺が決めたことが間違っていてもまずは見届けて、そこからアドバイスをしてくれる。そんな人たちだった。 大学に入ってからは一人暮らしに憧れてダメ元で両親に頼み込んだ。そしたら「やってみなさい」と笑顔で送り出され、少しだけ驚きが隠せなかった。 そして人生の機転にも成り得る羽田佐奈と出会ったのはもう数年前になる。 *** 「おにいちゃん」 「うん、どうしたの?」 5つ年の離れた弟と公園に遊びにきていた。 まだ日差しが強く、ミシミシと暑い夏の日だったと思う。 「トイレ……」 「あぁ、おいで」 弟は少し恥ずかしそうに下を向きながらそう言った。 あの公園のトイレはほんの少しだけ薄暗くて子供ひとりでは怖くて行けないのだろう。 しかも弟はビビりで、おばけ 幽霊 そういう類のものが大嫌いだった。 「待っててね」 「ちゃんと待ってるよ」 何度も念を押す弟に苦笑いをしたのを覚えている。 そして終わるのを待っている間、個室からガタガタとドアが揺れる音が気になっていた。 心做しか嫌な音も聞こえてくる気がする……。
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