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3-21 仲良しの後輩

仁也は、演劇部の活動のない日はいつも、水泳部員が使えるジムで放課後を過ごしていた。 メニューは違えど、哉も同じ場にいるから、二日も続けて仁也の姿が見えないことを少なからず不審に感じていたに違いない。 夜Limeが来たけれど、返さなかった。 既読無視したのは初めてで、どうせなら開かなければよかったと、つい癖で表示をタップしてしまった事を後悔した。 休み時間、A組に哉がやってきた。 丁度廊下に出ようと後ろのドアから出た所で前の入口から覗き込む姿を見つけ、慌てて階下へ逃げ出した。 階段の下でぶつかりそうになった梶川に、3年の教室へ連れ込まれ、昼休みは1年の教室へ行けばどうかとアドバイスされた。 チャイムの鳴り終わるギリギリに駆け込みで戻り、昼休みが来るまで、休み時間ごとに教室のベランダに潜んだ。 『どうした?具合悪い?  部活、明日は出られるか?』 それだけの質問に、答えを返す勇気が無かった。 『演劇部はもうやめた』なんて、言えなかった。 その日の放課後。 仁也がカバンを担いで急ぎ足で階段を下っていると、後ろからパタパタッと駆け下りて来る足音が聞こえた。 瞬間、哉に見つかったのかと身を固くした仁也だったが。 「ニャーちゃん先輩、こんにちはっ」 自分を呼ぶ 哉よりも大分高音のその声に、ホッと安堵の息を吐き足を止めた。 「ふゆ君。……クリス君も」 ぴょんぴょんと跳ねるように下りてくる冬兎から少し遅れて、クリスも手すりに掴まりながら走り下りてくる。 「こんにちは」 「こんにちは。昼休みはありがとね」 感謝の気持ちを伝えれば、「また来週も待ってます!」と返された。 可憐な小花でも背負ったようなキラッキラの笑顔で。 「ニャーちゃん先輩はもう帰るんですか?」 「あ、…うん」 当然あとの二人──一狼と獅紀──も続くのだろうからと階段を見上げたままでいると、冬兎もクリスも先に下って行ってしまう。 「昇降口までご一緒します」 遅れる仁也に気付いたクリスが声を掛けた。 「あれ…、あとの二人は?」 「2人はジムで、僕たちは今日は図書室でお勉強です」 「あっ!そうだ。ニャーちゃん先輩、もし急いでなかったら、僕たちの勉強見てもらえませんか? 数学で分からないところがあって」 「───!」 冬兎の言葉にハッと目を見開いた仁也だったが、やがてぱぁーっと顔を綻ばせた。 演劇部にも後輩は何人もいるけれど、仁也が姫のせいか、人当たりが良くないせいか、こうして頼られることなど今まで一度たりとも無かった。 勿論、目立たず地味に過ごしていた中学時代なら尚更、後輩の知り合いすらいなかった。 初めて仲の良い後輩が出来たその感覚に、大袈裟でなく胸が打ち震えた。 「うん!俺で良ければ、なんでも聞いて!」 園咲学園のクラス分けは成績順。 入試の成績、それから進級するごとにA組からH組へと、成績順に振り分けられる。 冬兎とクリスもA組だが、自分だってA組だ。去年もA組で一年間過ごしてきたのだ。 『なんでも』訊かれることに不安がないわけではないが、それ以上にこの後輩たちの期待に応えたい!!

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