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喫茶店のオーナーと甘党の彼_13

「江藤先輩、申し訳ありませんでした」  そんな江藤の姿を見た大池は、我に返った途端に真っ青になって何度も何度も謝った。 「いいから」  ぎゅっと頭を包み込むように抱きかかえれば、大池の髪が肌をくすぐる。 「お前が気持ちよくなれたなら、俺はそれで良いんだから」  な、と、頬を撫でればそのまま胸へと顔を埋めた。  何度も吸われて摘ままれて痛い筈の胸がぴくんと反応する。 「ん……」  また触ってほしいと主張をはじめる前に起きあがろうとするが、大池がそれを止めるように腕を回してくる。 「もう少しだけこうしていては駄目ですか?」  甘えるような目で見つめられ駄目だなんて言えるわけがない。 「わかった。もう少しだけ」 「ありがとうございます」  はにかむようなその表情にくらっときて目を閉じる。  江藤は可愛い年下の彼氏に甘い。  結局、その日は彼を抱きしめたまま眠りについた。  テーブルの上に置かれたスマートフォンの、その画面に映し出された大池と信崎の画像。 「で、コイツは何なわけ?」  とんとんとテーブルを指で叩く江藤は口元には笑みを浮かべてはいるが目は笑っておらず。  昨日、喫茶店へと向かったのはこの写真の為だったことを思いだして真っ青になる。 「馴れ馴れしいとは思ったんですが……」  江藤の様子をうかがうように言う大池に、 「へぇ、そうなんだ」  そう冷たい声で言えば。 「申し訳ありませんでした」  と椅子から立ち上がり頭を下げる。  感謝や謝罪は45度でお辞儀、それは大池が新人の時に江藤が教えたことだ。  真面目に最敬礼する大池が愛おしくてたまらない。 「ぶはっ、くくく……」  腹を抱えて笑い始める江藤に大池はキョトンとした表情をする。 「なんだか浮気を問い詰めてる妻みてぇだよな、俺」  な、旦那様と肩を叩き。 「悪い、お前が好き好んでこんな写真を撮らせるわけないって解ってる。どうせ信崎の仕業だろ?」  悪ふざけすぎると、その写真を消去した。 「……先輩」 「なぁ、今度、俺の兄妹に会ってくれないか?」  写真じゃなくて実際に会わせたいんだと腕を絡める。 「俺を、ですか?」 「あぁ。大切な人達だから大池を紹介したいんだ」  これから先、共に歩んでいきたい人なのだから。 「はい。江藤先輩とお付き合いさせて頂いていると、ご家族にちゃんとご挨拶しませんとね」  頑張りますと気合を入れる大池。  そのズレた感覚もまた可愛いなと江藤は微笑んだ。

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