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第160話

 ねぇよ。と思ったが、なんとなく言えなかった。いかにも体育会系らしい真木と、引きこもり気味の帰宅部だった自分とでは、交友関係も通ってきた遊びも、なにもかもが異なっている気がしたからだ。  ――いや、十歩譲って、手で抜くくらいならあるのかもしれないけど、口はないだろ。口は。  べつに一人で抜くし、処理するし。そりゃ、ちょっとは虚しいかもしれないけど。でも。悶々と考える。  ――と言うか、そもそもとして、俺ばっかりしてもらいたいわけでもなくて。  この年になって処女信仰なわけでもないし。経験がないと思ってたわけでもないし。そもそも、俺、今までの彼女に初めてを求めたことなんてなかったんだけどな。  むしろ処女とか面倒臭そうで嫌だ。手慣れた人の方がよほど良い。そんなことを思っていたはずだ。  そう考えれば、ある意味で、真木は理想に近い。  手慣れていて、年上で、日和を包み込んでくれるだけの甲斐性があって、寂しいだとかリードして欲しいだとか、そう言った甘えたことは絶対に言わないだろう。  でも、なぁ。  我儘であることを自覚しながらも、思ってしまうのだ。それって、なんか寂しい。やっと「好き」だと言う感情を受け止めてもらったはずなのに、あの人の掌の上でひとり踊り続けているみたいだ。  指先から与えられる刺激は、自慰とはまるで違っていて。的確に日和の気持ちの良いところを責めてくるものではなかった。ただ、この人が、この人の意思で触れているのだと思うと、たまらない快感が走った。
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