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第1話【ヤってみたいお年頃】
最初にこれだけははっきりさせておこう。
俺は腐男子ではない。
だが知識はある。
何故なら姉ちゃんが腐女子だから。
中学の時、偶然姉ちゃんの部屋でBL本を見つけ、気付けばどっぷりハマっていた。
だって過激でエロいし。
絵が綺麗だからホモ、ていうより普通に男女のそれに見えなくもないかなーって。
以来こっそり姉ちゃんの部屋からそーゆー本を借りて読むうちに、思ったんだよ。
俺もヤってみたい。
男同士で尻の穴に突っ込むと、本当にそんな『女の子とするよりも』気持ち良いんだろうか?
男がHの最中、BL本みたいにアンアン言うのだろうか?
前立腺の刺激だけで、前も触らずにイクことって本当に出来るんだろうか?
てか何かもう、どうせ女の子に一切モテない俺が彼女なんか作れる筈無いし、この際男でも良いからHしたい。
だってそーゆーお年頃なんだから仕方無いじゃない!?
……と。
そして何の因果か陰謀か、
全寮制男子高校に入学させられた俺は
「今こそ実行の時!」
なんて、つい勢いで寮の同室者を襲ってみた。
別に、実家を離れたせいで姉ちゃんのBL本が読めずに苛ついてたとか
ムラムラし過ぎて理性が飛んで歯止めがきかなくなった
……訳ではない。
ちなみに同室者は不良です。
見た目は、だけど。
一年生の時から同じ寮部屋だし、最初は怖かったけど今じゃすっかり仲良しだぜ。多分。
だから例えば、途中で逃げたり殴られたりしないように腕や足を縛ったとしても、後で謝ればきっと許してくれる筈。
そもそも普段からコイツ、学園の生徒とヤり慣れてるらしいし。
まぁ平凡な俺が相手じゃ嫌だろうけどさ。
あ、誤解されると嫌なので確認しておきましょう。
『俺もヤってみたい』
『この際男でも良いからHしたい』
うん、確かに俺はそう言ったね。
間違いない。
ただし俺が目指すのは『攻め』側だ。
ベッドの上での男役でありタチであり、つまるところ相手の穴に俺の最終兵器(笑)を突っ込む方な訳ですよ。
だって男の子だし。
……肛門にちんこ入ってきたら絶対痛そうだし。
ところで
同室者の名前は、弘毅(こうき)っていうんだけど。
見た目が不良なだけあって背は高いし筋肉あるし、何より腹が立つほど美形なのだ。
当然のように奴はタチ側で、いつも可愛い美少年らを相手に腰を振りまくりである。
幸い、平凡な俺には食指が動かないらしく、一年間同じ寮部屋でも狙われたことは一度も無い。
そういや、自室に相手の子を連れ込んだりとかも無かったな。
夜はたまに誰かの寮部屋に泊まって朝まで帰らない、くらいはあったけど。
暇な時は俺とゲーム対戦したり、映画観たり。
うんまぁ、普通の気安い友達みたいにお互い接してるよね。
だからという訳でもないが。
夕食時間を過ぎても部屋に戻らない弘毅に、
「ああ今日も外泊か。今頃すでに突っ込みまくってんのかな、くそ、羨ましい……!」
と逆恨みの嫉妬を抱き、ぶうたれながら風呂に入った俺。
数十分後、心身ともにカッカしながらリビングルームに戻れば、いつの間に帰ってきたのかソファーで眠る弘毅の姿が目に入り。
…………よし、ヤろう。
そこには理屈も屁理屈も無かった。
とにかく安心しきって熟睡する、見た目不良の弘毅を見たら、脳が勝手に決めたというか。
こいつばかりが突っ込んでてズルイ。
俺も気持ち良くなりたい。
『平凡×不良』?
いいね!
BL的にありだよね、うん。
バリタチの不良くんが、自分より体格の小さい平凡(俺)に無理やり襲われて淫乱Mネコに目覚めちゃったりとか……たぎる。
そう思ったのだ。
まあ理由なんかどうでも良い。
ふふふ、ついに俺の筆下ろしが実現する。
今まで相手を鳴かせてきたタチの弘毅くんが、この俺の最終兵器とそのスーパーテクに翻弄され、あられもない声と姿をさらすのだ!
そうと決まれば時は金なり、善は急げ、急がば回れ。……ん?
とりあえずその辺に脱ぎ捨ててあった弘毅のネクタイで腕を縛らないと。
足は俺のネクタイを使うか、勿体無いがまあ仕方あるまい。
ふふ、ふははっ、わはは。
やったぞ俺は人生に勝ったー!
………………筈だった。
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