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〇の視覚 30

 今まで円の頭の中に住んでいたシノは、素直で、感情豊かで、常に劣等意識と自己嫌悪に苦しめられていた。  このセリフは、納得のいかない現状をすべて種族(じぶん)のせいにして、何もかも捨ててしまいたいという衝動に支配されたセリフだ。 後半になって勢いを増していくのは、強い自己否定とかたくなな現実逃避。  けれど今ここに立っているシノは、自分を納得させるように内側へ言葉を叩き込み、後半になってようやく弱音をこぼす。 今回|三角が演じたシノからは、否定することで強くあろうとする、方向性を誤った未熟な前向きさを感じた。 心の奥底では自分のことを好きになりたいのに、そうなれないジレンマが透けて見える。 (今まで見たことないシノだけど、平面的なシノとは違う。意思も温度もあるシノなら多分……) 『どっちのキミも、ボクは素敵だと思うよ』  流れるように繋がった最後のセリフ。 さきほどは優しく相手を受け止めていた三角のシノが、今はそこに寂しさと羨望を滲ませている。
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