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   まだ、髪が少し濡れたままのオレを見て、女将がニコリと笑う。  「お湯加減は、いかがでしたか?」  「あっ、はい。…気持ち良かったです」  世辞は抜きで、素直に感想を述べれば、女将が嬉しそうに微笑んだ。  「まあ、ありがとうございます。…狭い宿ですけど、お風呂は当館の自慢のひとつなんです。11時に、男湯と女湯が入れ替わりますから、よろしければ、そちらも是非。檜風呂と、外には露天風呂もありますから」  「はい、行きます」  女将の言葉に頷き、オレは近くにある部屋のパネルを指さした。  「あの…、部屋の前にある写真なんですけど。…あれは、久我原穂高が撮影したものですか?」  「ええ。…穂高先生と、私の主人は、もう40年近く、親しくさせていただいておりまして」  「…よっ…」  ──40年!?  それじゃ、穂高は写真家になるどころか、まだ子供じゃないか!  オレの驚きに、女将がいたずらっぽく、クスリと笑う。  「主人と穂高先生は、小学校の時の同級生なんです」  そう言うと、女将はオレを促すように歩き出し、ロビーのソファへと案内する。
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