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第210話

「ごめんね……結構重い話しちゃった……柳君がそんなに泣く事無いのに……」  流れる涙をそっと拭われると、抱き締められてスッポリ悠斗の胸に顔を埋める。  六歳からなのだ……。  小さい時の事はあやふやな事が多い。それでも、何と無く人は覚えている。俺と一緒に居た時間が長い分、それだけ多くの事が欠落しているはずだ。 「柳君って、静かに泣くよね?」 「病院でも思ったんだ……なんて綺麗に泣くんだろうって」 「初めはさ、その泣き顔に釘付けになって興味が湧いたんだけど、一緒に居るうちに不安な気持ちが無くなって、安心するなって思えたんだよ?」 「柳君と居ると、空白が埋まる時が有るんだ……変だよね?」 「……埋まる?」 「うん。全部じゃ無いけど、所々かな? 結局繋がらないから良くわからないけど。それでも僕にとったら嬉しい事だよ?」  もう、話してしまおうか……。  そう思ってしまう。でも、きっと悠斗はもし俺と付き合っていたと知ったら、優しいから責任取らないとと言って、無理に俺に合わせて付き合うんのでは無いだろうか。  今の悠斗はわからない事が多くて、俺に興味を持っている。恋愛感情で好きとは程遠い気がしてならない。  無理矢理付き合うなんて、いずれ綻びが生まれる。やっぱり恋人だった事は言わない方が良い。ならば、幼馴染みだった事は? ただ、散々嘘を付いて来た……今更、実は……と言っても良いものなのか。何故真実を教えてくれなかったの? と責められる事が怖い。 「少しずつ……少しずつでも、俺と居て埋まるなら──立花君が安心出来るなら……」 「……うん。そうだね、柳君と出会えて良かった」  抱擁が解かれ悠斗の熱が引いて行く。ニコリと微笑む悠斗に罪悪感が湧いてくる。  きっとお前が探しているのは、「柳瀬菜」俺そのものだと。 「柳君の悩み事聞くって言っときながら、情けないなー。すっかり僕の悩み相談になっちゃったね」 「ううん。そんな事無いよ。話してくれてありがとう……」  広いベットの上に距離が空いた並びで、お互いに背を向けて眠りに付いた。友達の距離。俺達がまた、抱きしめ合いながら眠れる日を夢見て。夢の中ぐらいは恋人になれれば幸せだなと……。暗闇で悠斗と俺の鼓動を聞きながら、早く眠って夢を見させてと、瞳を閉じてその時を待った。 ***  その日の夜は想いが神様に通じたのか、俺の頭が引き出しの整理をしたのか夢を見た。とてもヘンテコな夢。叔母さんが悠斗と俺は実は兄弟と言う、あり得そうでリアルな夢。恋人は無理だから、兄弟になりたい的な俺の願望なのか? それはまぁ、また次回という事にして……。  ──なんか俺、抱き枕状態……?  ……というか? 湯たんぽなの? 「おはよう。柳君。朝はまだ寒いね?」 「おはよう……俺は立花君のお陰で暖かいよ?」 「うん。僕も暖かい。ベットで二人で寝て正解だね?」 「そうだけど、恥ずかしいからそろそろ……。今日はこの後どうするの?」 「もうちょっとゆっくりしたいけど、予定入ってて……。また泊まっても良い?」 「そっか。勿論いつでも歓迎するよ。また明日学校でだね」 「うん。明日は病院行ってからだから、朝一緒に登校出来ないけど、お昼は御飯みんなで食べよ?」 「わかった。村上には言っとく」  洗っておいたシャツもすっかり乾いて、ホラーな血も幸い落ちてくれた。買い物に付き合って、昨日は色んな話をして、焦った事も一杯有ったけど、事故の事や悠斗の今の状態を本人からちゃんと聞く事が出来たのは、今後のためにも良かったと思う。  まだまだ課題は多そうだけど、悠斗の支えになりたい。自分だけで悩んだ時は、多澤や村上にも相談して良い方向に流れたら。 「柳君、本当にありがとうね。一杯甘えちゃってごめんね?」 「ううん。御飯美味しかった。アイスはまた明日にでも!」 「ふふっ……そうだった。それじゃ、お邪魔しました」  丁寧にお辞儀をする悠斗に、バイバイと手を振って玄関の扉が閉まるのを見送る。  次の日学校でまさか、あんな姿になっているとは……その時は思ってもいなかった。
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