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3 「俺らの街食堂 1」

 この街で金のない奴の九割が集まるこの汚い食堂に、俺たちも例外なく常連となって夜ごと集まっていた。 「おいっ、それオレが頼んだやつだろう!」 「せこいこと言うなよ。ほら、これやるから」 「せこい言うな! オマエが大ざっぱすぎんだろうがっ」  四人がけのテーブルとイスに六人がぎゅうぎゅうに身を寄せ合う姿はこの店ではいつもの光景だ。店の狭さの割にここはいつも人で溢れていた。 「早く食べないとなくなるよ?」  六人の中で一番大人しく見えるハヅキが手元の皿に何種類もの料理をせしめておいてしゃあしゃあと助言する。もちろん隙をつかれて自分の料理を盗られた仲間は胡乱げな眼を送るがハヅキはそんなことは気にしない。 「いてっ、おい! 肘あてんなよ!」  仲間に盗られまいとでかい皿ごと手に持ち料理をかき込んでいたヒサシが隣のムラタを睨んだ。 「うるせーな。仕方ねーだろ、狭いんだから」  デカい身体で背筋を丸めて小さくなり、なるだけ両脇の人間に迷惑をかけないようにしているムラタだが、そのガタイではそれにも限界があった。なのに毎回飯を食いにくるたびに座る席が同じなのは、もう仲間内の習慣としか言いようがない。 「せせこましい店によくこんだけの人間入るよなあ」  ヒサシの向かい側に座るノブオが店の中をちらっと見渡して感心する。ちなみにハヅキに一番最初に料理を盗られたのはノブオだが、いつものことなのであまり気にしていないらしい。 「今うちの店の文句言ったか? ああ? 別に他に行ってくれてもかまわんぞ、俺は」  料理を運び終わりキッチンへ戻ろうとしていたここの店主がタイミングよくノブオの言葉を聞きつけ、ドスの利いた声で上から六人を見下ろしてきた。 「何言ってんの、店長。ここの味覚えたら他行けないって!」  年齢不詳の店主はいつも白いタオルを頭に巻いてはいるが髭をあたっている様子は露ほどもなく、衛生管理など知ったことかというスタイルの持ち主で、強面だ。だが悪い人間ではないことはこの店の客なら誰もが知っていて、気安く話しかけてはその口の悪さを楽しんでいた。 「ちっ。口だけは成長しやがって。ちったぁ稼いでたまには俺に土産でも持ってきやがれってんだ」  六人の中でもいっとう元気なサスケがことさら明るく言うと、強面の店主が呆れてぶつくさと文句を垂れる。
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