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3 「俺らの街食堂 2」

 貧民街のこんな場末に美味さ安さじゃピカ一のこの店があるのはサスケや仲間にとってとてつもない幸運なのだと彼らはよく知っている。  だからサスケの言うことはお世辞でもなんでもない、心からの賛辞だった。 「金はない! けど店長の好みの奴なら紹介してやるぜ?」  サスケが何の悪気も無しに朗らかに店主を見上げると、強面がとたんに複雑そうな表情に変わる。 「アホか。女衒みてぇな真似してんじゃねえよ。もちっとまともなことやれ」  溜息をついて諭されるが、サスケには何のことだかわからず、キョトンとする。 「ゼゲンって何?」 「--オツムも赤ん坊並みか」  強面の店主にしては珍しい苦笑は、決してサスケを蔑むものではなかった。この界隈では学がある者の方が珍しいのだ。 「江戸時代に遊女奉公を手引きした人のことだよ」  その珍しい人種のハヅキがせしめた料理を堪能しながらさらっと説明した。 「ユウジョボウコウ? テビキ?」  しかしサスケにはまったく通じない。というよりハヅキ以外の五人ともが首を傾げていた。 「今でも女をあてがったりする仕事のことをそう呼ぶ人もいるんだよ」 「相変わらず変なこと知ってるよな、ハヅキって」  ムラタの向かいでハヅキとノブオに挟まれたテツオが得体の知れない酒を呑みながら感心すると、同意するように向かい側の三人が頷いた。  それを上から眺めていた年長の店主が何やら思いついたように悪い顔をしてサスケを見る。 「紹介はいらねえがオマエが相手するってなら話にのってやる」 「--え? オレ??」  いきなり予想の斜め上な提案をされ、サスケは驚いて目を丸くした。  その横で本人よりもさらに目を見開いたヒサシが勢いよく異議を唱える。 「店長! こいつはダメ!!」 「てめえには聞いてねえよ。--どうだ?」  目も合わせずにヒサシを牽制し、店主が人の悪そうな笑みでサスケを促す。すると首を傾げて本気で考えていたサスケが髭面の店主をじっと見上げた。
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