1 / 68

◇1◇

※ ※ ※ ※ 「あっ……んっ……いい、気持ち……いいよっ……あんっ……あっ……」 「はあっ……はっ……どう、乙哉くん……ボクの……気持ちいいかい?」 「うんっ……とっても……気持ちいいよぉ……あっ……もっと、もっと……突いてぇ……っ……やっ……あんっ……」 ぬちゅっ……ずちゅっ……と、ホテルの一室に淫靡な音が響き渡り、乙哉――もとい、俺はあらん限りの声で矯声をあげる。俺の上に乗っかり、鼻息あらく腰を上下に突きまくる男は滑稽で――まるで、豚のようだ。しかし、いくら豚のように醜く滑稽な男とはいえ――ファンサービスは重要なのだ。 特に、俺のようにモデル雑誌やテレビに出まくる人気アイドルにとっては――金づるとなるファンを何としてでも繋ぎ止めなければならない。 「ああっ……そろそろ、イクよっ……乙哉たんの……中にびゅる、びゅる……出しまくるよっ……」 「あんっ……出してっ……インランな乙哉の中に……いーっぱい……出してっ……!!」 (何が、乙哉たんだ……気持ちわりぃ……) という本音は胸の中に終いつつ、俺は必死で容姿も鼻息も豚のような男にしがみつきながら媚を売りまくった。 びゅくっ……びゅ……びゅっ!! 「あんっ……中に出してって……言ったのにっ……んんっ……」 「はあっ……はあ……ごめん、ごめん――乙哉たんの綺麗な顔に……どうしても出したくなってさ……今日は乙哉たんの誕生日だろ?プレゼントだよ、プレゼント♪」 れろぉ、と男の舌が少し黄色がかった精液まみれの俺の顔に伸びてきて、べろべろと舐めまくってきた。その途端、全身に鳥肌が立ってしまうが――このような些細な事で大事なファンを無くす訳にはいけないため必死で気持ち悪さに耐えるしかないのだ。 この地獄の時間から解放されたのは――それから暫くして、シャワーを浴びてからの事だった。 とん、とん……と部屋の外から扉をノックする音が聞こえてきたのだ。 「はい、はい……何でしょうか?」 「失礼致します――お客様。誕生日サプライズのため、ケーキと花束をご用意致しました」 と、俺が扉を開けると――その言葉だけを淡々と言ってからホテルの人は眉ひとつ動かさずに此方へと歩み寄り、蝋燭のついた高級そうなショートケーキと赤い薔薇の花束を運んでくるのだった。 「えっ……赤い薔薇……の……花束!?」 「……っ……!?」 豚のようなファンの男が驚きの声をあげるのとほぼ同時くらいに、目の前に運ばれてきた薔薇の花束から俺は思わず顔を背けてしまう。 とある理由で――俺は赤い薔薇が大の苦手だったからだ。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!