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び、びっくりした……一瞬、その冷静な態度と氷のように見つめてくる乱入者の目が――俺の鬼マネージャーである【日比野】にソックリだと思ってしまった。 「なっ……なっ……何だよ――お前、ノックもせずに勝手に入ってきやがって……っ……!!」 「……お言葉ですが、私は何度もノックしました……ですが、あなた方が昼間から夢中でナニかをしていたせいで……聞こえていなかったのですよ?」 「お、お前……単なる花屋の……しかもミスしたポンコツ店員のくせに……ナニ様のつもりだ!?」 「……そのポンコツ店員である私がこれから来ると分かっいるのに、このような事をしているあなた方こそ――ナニ様のつもりですか?あと、新人の子を苛めるのは止めて頂きたいのですが……」 と、そのように言い争いをする豚みたいな金ヅル社長と真面目そうな乱入者を目にしながら――俺は思わずプッと吹き出してしまった。 すると、ふいに乱入者の彼が俺の姿をジッと見てくる。俺――テレビや雑誌なんかに引っ張りダコの有名人だから、深い仲以外のヤツらにこんなヤバい事をしてるって余り知られちゃマズかったかもな――っていった所でもう遅いよな、と思い直すと乱入者【月野】へと満面の営業スマイルを向ける。 「……とにかくですね、あなた……会社の偉い人だっていうのに――こんないたいけな少年を捕まえて真っ昼間から売春させているなんて……本当にタチが悪いですよ……とはいえ、薔薇の花束を贈ってしまった事に関しては完全なる此方のミスですので……」 「なっ……何なんだよっ……っていうか、何であんた……俺の名前――知らない訳?」 ぎろり、と蛇のように鋭い目で乱入者を睨み付けている金ヅル社長の存在を無視するかのように、ヤツはすた、すたと呆然としたままの俺の方へ向かって歩いてくると――、 「これ――お詫びとして……あなたに贈ります。因みに、これは私が自腹で店から購入した花です……よろしければ……受け取って……ください」 「えっ……えっと……その……ありが……とう?」 小柄の向日葵だけで作られた花束を――その乱入者の【月野】という男はにこりとも笑わずに相変わらず素っ気ない表情を浮かべながら差し出してきた。 そのあまりにも唐突なヤツの態度に驚きを隠せないとはいえ――目を丸くしつつも思わず向日葵だけで出来た花束を受けとってしまう俺なのだった。
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