22 / 68

◇22◇

※ ※ ※ 「それで……2人は――どうしてホテルにいたの?本来なら乙哉とホテルにいるのは……別の人の筈だけど?」 「…………」 「…………」 唐突だが、今――俺こと太陽(アイドル名は乙哉)はホテルを後にし、乱入者である日比野というマネージャーと花屋の【月野】という店員と一緒に車で、とある場所へと向かっている。 その、とある場所とは――【月野】が働いている《sunflower》という花屋だ。仕事中の【月野】を此方の都合で引き止めてしまったため花屋で働く皆さんに謝りなさい、と鬼のような形相を浮かべながら日比野さんに怒られてしまう俺。普段、日比野さんはヘタレなため――本気で怒ると怖いのだ。 ここに至るまでの経緯を簡単に説明したものの、流石に俺が【月野】を誘うような態度を取って、あんなに卑猥な行為をしていたなんて――いくら悩みがなさそうで楽天的だ、と言われている俺でも――そればかりは口が裂けても言えない。 (ましてや……日比野さんに言うなんて……そんな、そんな事――できない……) ふわっ…………と運転席にいる日比野マネージャーの方から甘い薔薇の香りが漂ってくる。 その香りを嗅いだ瞬間、俺の目から無意識のうちにポロッと涙が零れ落ちそうになり、慌ててマネージャーに気付かれないように袖で拭う。 (薔薇の香りなんて……もう嗅ぎたくないのに――まして、以前……俺をこっぴどく振った張本人の日比野さんからなんて……嗅ぎたくなんかないのに――これだから、薔薇は――嫌い、なんだ……) しかし、運転席にいて集中している日比野さんからは見えなくても、隣に座っている【月野】には俺が必死で涙を堪えようとしている姿が見えていたらしく、ポケットから取り出した白いハンカチをぎゅうっと半ば強引に握らせてくるのだった。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!