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第4話 東京

 春は繰り返す、瀬戸冬馬(せととうま)二十四歳。孤独の春には慣れてしまった。  長めの黒髪に大きな瞳が年齢よりも幼く見えた十八歳の頃、決めた就職先はいわゆるブラック企業だった。けれど仕事に身を任せたら日々は淡々と過ぎて行くのでそれほど不快ではなかったのだけれど。  痩せぎすの身体は食事は未だに上手く食べられないと言うこと。誰かに誘われて飲食店に行っても食べられるものは水分くらいで楽しくもなく、つまらないやつ、と大抵のやつは離れて行く。だから友人なんて数えるほどで……いや、本当はただの義理の付きあいで友人ではないのかもしれない。後にも先にも本当の友人は晴翔だけだった。あいつはいまどうしているのかな、おれはこの広い東京でかろうじて命を繋ぎ生きている。  今日の通勤電車は不快だった。何本か前の電車でトラブルがあって、後続の電車は少し動いては、止まる。早めに出てきたので会社に遅刻はしないだろうがいまはそれどころではない。 ”気持ち悪い、倒れそう”、貧血はよくあることだったし倒れる前に少し休めば回復する。それはわかっているけれど満員電車、席は空いてないし誰も譲ってくれるわけもない。目の前が暗く、めまいがひどい。次の停車駅はもうすぐ、せめてそこまでもたないだろうか。耳鳴りで音が聞こえない、もう諦めて意識を手放そうとしたその瞬間だった。力強い誰かの手がおれの腕をつかんでいる。筋肉質で派手なアクセサリーをつけていて多分おれとは縁遠い人なんだろう。しかし彼はおれをそのまま抱き寄せて、ようやく止まった電車から降りれば最寄りのベンチに座らせてくれた。そうして自販機でお茶を買い、おれの隣に自分も腰掛ける。 「大丈夫ですか?」 「あ、ああ……すみません。すぐに治りますから」
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