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香り

慶司と一緒に飲んでいて、幾つか分かったことがあった。 慶司と亜蓮は地元が同じで歳は五歳年下。亜蓮の通っていた高校へは落ちてしまって行けなかったこと……等。 話しながら、あの時優吾がそんなことを言っていたなと思い出した。 慶司は亜蓮と同郷だと言いかけた優吾に痺れを切らして、自分からセックスを持ちかけて話を最後まで聞かなかった。慶司が始めから亜蓮のことを知っていたのかもしれないとも言っていたような気もする。でもいくらこうやって話したところで何も感じないし、思い出すこともなかった。やっぱり優吾の気のせいであって、亜蓮と慶司は今回の件で初めて会った者同士なのだと、残りのビールを飲み干しながら亜蓮は思った。 「亜蓮さん、まだ時間大丈夫でしょ?」 酔っ払ってしまったのか、慶司は亜蓮に寄りかかるようにしてそう聞いてきた。心なしか頬も赤く、喋り方もちょっと舌足らずになっている。 最近二十歳を迎えたばかりの慶司。酒を嗜むようになったのだってきっと最近のことだ。この状態を見て、慶司が自分の適量を知っていて上手な飲み方が出来るとも思えず、しょうがないかと亜蓮は送ってやるつもりで「大丈夫」だと答えてしまった。これ以上飲ませて泥酔でもされたらたまらない。せっかく警戒心もとけ、慶司と楽しく飲めていたんだ。ご機嫌な慶司を説得して、亜蓮はもうお開きにしたかった。 「大丈夫だけど……だいぶ酔ってるみたいだから送るよ。近くなんだろ?」 さっと会計を済ませた亜蓮は慶司の顔を覗き込むようにしてそう聞いた。 「………… 」 ヘラっと笑う慶司の顔を間近で見て、亜蓮はハッとした。一瞬微かに香った香水の匂いが思い出したくない人物を連想させた。何の香水だかはわからない。沢山の客を接客していても同じ香りを付けいている人物には出会った事がなかったから、もしかしたら珍しいものなのかもしれない。 「ん? どうしたの? 亜蓮さん。亜蓮さんこそ酔ってるんじゃないの? 俺を送ってどうするつもり?」 悪戯っぽく笑う慶司に我に返る。一瞬の事なのに一気に酔いが醒めた気分だった。先日優吾と身体を交えたあの日も尊の顔がチラついていた。たまに夢に見るくらいで、今までは特に思い返すこともなかったのに……慶司と出会ってからというもの、嫌なこの思い出が少しづつ掘り起こされていくようで気分が悪かった。 「どうもしないよ。大丈夫? 立てる?」 相変わらず亜蓮に寄りかかったままの慶司の肩を軽く抱く。ふにゃりとわざとらしく頭を擦り寄せてくる慶司に「いい加減にしろ」と言って亜蓮はその肩を軽く小突いた。 先程微かに香った香水は、気のせいだったのかと思うほどもう気にならなくなっていた。
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