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第2話

 言われた通りそそくさと部屋に戻り、着ていたシャツを脱ぎ捨てて新しいシャツを… ない。 ストック尽きて洗濯中なのを忘れていた。 バルコニーへ出てみて確認すると、まだ乾いておらず、途方にくれる。 トントン  ドアをノックする音。 上半身裸の状態で涼司は一瞬慌てたが、仕方なくまた汚れたシャツを着てドアを開けた。 「突然失礼いたしました。もしお着替えにお困りでしたらと思いまして」  無地の白のTシャツを何枚か手に持って立っているのは、他でもない副支配人の佐倉。 「ちょうどほんまに着替えなくって困っててん。ありがとう、助かります」  涼司は早速濡れた気持ち悪いシャツを脱ぎ捨てて、真新しい真っ白なシャツに着替えた。 「はースッとした!何から何まですんません」  懐こい笑顔でぺこりと頭を下げる。 佐倉の眼鏡の奥で、眼光がわずかに緩んだ。 「お客様にご不便な思いをさせてしまいまして、申し訳ありません」  仰々しく一礼する佐倉。 「ここのホテルの、副支配人さんなんやんね?スゴイな、歳俺と変わらんぽいのに」 「ええ、若輩者ながらこちらの副支配人を務めております。以後ご不便などございましたら何なりとお申し付け下さい」 「副支配人さんがこんな接客もするの?」 「普段は裏方仕事が多いですね。ただ有難いことに、今の時期はたくさんのお客様がお越し下さ  いますから。お客様に直接おもてなしする機会に恵まれて、とても光栄です」  やんわりと上品に微笑む。  そう、一言で言えば、上品。 あまりにも無駄のない動きと気品に溢れていて、まるでロボットみたいだ、涼司は思った。  涼司はバルコニーに出てぼんやりと景色を眺めた。 全室オーシャンビューのホテルなので、当然海がよく見える。  海か… 一緒に来たかったな。 第一部一緒に観た映画、第二部も一緒に観ようって約束したのにな…  たぶんもう、無理や。  忘れたい気持ちに反して、どんどん思い出して行く、彼との思い出。 何かが込み上げてきて、鼻がツンとする。 重症だ。 涼司は呟いて、部屋を出た。 部屋に一人でいたら余計なことを考えてしまう。
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