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第3話

 波打ち際を裸足で歩いてみる。 砂浜だから、と油断していたが、石や貝殻など、鋭く尖ったものもあり、裸足で来たことを後悔する。 「痛ッ」  案の定、かなりの痛手を負ってしまう。 足裏を見ると、けっこうザックリいってしまっていた。あとからあとから血が流れる。 「マジかよ。もーついてないなあ!!」  ぶつけどころのない怒りに涼司は苛立つ。一人部屋にいればロクでもないことばかり思い出すし、外に出てみればケガするし。 この頃ついてなさすぎる。  左足だけ、爪先を浮かせて踵で歩く。当然、誰の目から見ても不自然な歩き方だ。 「椚田様!」  遠くから、呼ぶ声がした。 声の方を見ると、佐倉だ。 「お怪我でも?」  即、足の裏を見られる。 「すぐに消毒いたします、歩けますか」  今にもおぶりだしそうな勢いに危機感が生じ、涼司は急いで平気そうに立ち上がった。 が、やはり痛い。 「椚田様、担架を手配いたしましょうか」 「もう、大げさやって!…んなら、ちょっと肩貸して」 「承知いたしました」 「失礼いたします」  脇に腕を差し入れられ、腰を支えられるような形になる。 ふわりと漂う香り。 煙草と、ごく軽いコロンのような香り。 二つの異なる匂いが絶妙にブレンドされて、不思議な色香を感じでなんだかドキドキしてしまう。 …ゲイにとってこの体勢は、アカンことない? にわかに意識し出す涼司。  あっという間にホテルの医務室に着いたが、足の怪我より、動悸のほうが痛い。 「保健師がいないようなので、簡単にですが私が処置させていただきますね」  涼司が座る椅子の傍らに、佐倉がすっと跪き、涼司の左足、足の裏が見えるようにそれはそれは優しくそっと持ち上げた。 「砂が入っています。すぐに取り除きますね」  消毒済みのピンセットを取り出し、傷口へーー 「痛っ」 「申し訳ありません。しばらくご辛抱を」  眉ひとつ動かさず、佐倉は傷口をほじくる。 「うぅっ…」  なんで切れてるのにそのまま歩いてしまったんだろう、涼司は再度後悔した。 結果、こんな昨日今日知り合ったばかりの男に片足を持ち上げられて傷口をほじくり返されて苦痛に顔を歪めているなんて…  急に、恥ずかしくなった。 なんか、この状況って…!!  意識してしまうとどうにもならない。顔は熱くなって、きっと赤いだろう。痛みの中に別の何かが生まれ出す。 「いっ…」  痛みからの悲鳴にも、他のものが含まれるようなーー
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