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第10話

 もう、忘れたい。 佐倉の言う通りだ。 会って何日も経たないうちに、ほんの一面しか知らない同性に告白するなんてリスキーなこと、普段だったら絶対していない。  そもそも本当に好きなのかどうかさえーー 「なかったことにされるのでしたら、何も確認することはございません。貴重なお時間頂戴して失礼いたしました」  踵を返して歩き出す佐倉。 「ーー待って。なかったことにするの、やっぱナシ」  咄嗟に佐倉の手首を掴んだ。 久々に触れた熱に、どきりとするものを感じた。 「…だから、確認事項教えて」  くるりと振り向いた佐倉は、やはり何を考えているのか読み取れない薄笑いを貼り付かせている。 「よかったです。私も、無謀で浅はかで勇敢な告白に、一応敬意を表してここまで参りましたので」  涼司はだんだんと、慇懃無礼とも取れる回りくどい敬語が邪魔に思えてきた。 「な、今日仕事で来たんやないんやったら、そのクソ丁寧な言葉遣いやめてくれへん?何言いたいんかわからんようなる」  豪奢なデザインの遊覧船が通る。 夜なのでネオンも煌びやかに施されている。 汽笛が鳴り、通り過ぎた後には水面に轍のような跡が波打つ。 「一週間ほど経ちましたが、あの時のお気持ちに変わりがないのか確かめに来ました。ですがどうやら黒歴史に分類されているようで」  少しだけくだけた言葉遣いになって、佐倉は揺れる水面を見つめた。 「く、黒歴史は間違いないやろ…確かに佐倉さんが言う通り、あの状況で告るのは無謀やったし。で、俺からも確認したい。佐倉さん、なんで俺呼び出したん?なんで確認しようと思ったん?済んだことやしスルーすれば良くない?」 「そう、なんですけどね。なぜかずっと気になって、頭から離れなくてね、あの夜のことが」 「…ホンマすんません…」  身を縮こめていると、爆弾発言が飛んで来た。 「椚田様は、ゲイですか?」 「ふぇっ?!」
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