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第9話 7、俺の番!

「なんか、いろいろ……ありがとう」  恥ずかしいけどと、言い添えて、はにかんで笑った。 「ぐぅっ!」  リヒトは唸り、うずくまる。 「え? どうしたの? 大丈夫?」  慌てて駆け寄り、背中を摩る。 「ジル先輩、ヤバいです!」 「え?」 「その笑顔、破壊力満点です! 俺、直撃喰らいましたっ!」 「え……?」 「やっぱり、俺、ジル先輩が心配です! あ、そうだ! 飛び級の話、元に戻して貰おう」 「飛び級?」 「同じクラスにして貰って」 「ちょっと待って! リヒトくん暴走してるよ」 「いや、もしジル先輩に何かあったら、俺、暴走どころじゃないですから!」 「リヒトくん?」 「後でシメオン先生に相談しよう」 「……」  リヒトは光属性を持っている。光属性を持つということは全属性を操れるという事。リヒトは相性のいい風・地・光を主なものとして挙げていたが、オールマイティーである。しかも全ての属性の能力が高い。故に複数の属性を掛け合わせた雷や氷、精神属性も操れる。高等魔法と呼ばれるものである。  しかしまだ多感な15歳という年齢を考慮し、高等部一年に入学した。リヒトの能力では一年どころか大学部でもおかしくはなかったが、もし番が一年にいた場合、学年を下がることが出来ないのでそれならばと、一年を希望していた。  今回このような状況なので、二年に飛び級もありかと考えた。  明日から是非同じクラスでと考え、早速話を進めるべく隣室のクラスメートに、精神魔法で相手の脳内に直接連絡を取る。 「そうそう、これ。ジル先輩ピアス開けてます?」 「ピアス? ううん」 「じゃあ、ちょっと開けますね。痛くないですから」  そう言うと、リヒトは手のひらに小さな氷を出し、何やら更に変化させ小さな針に変化させた。 「おお~、凄いね。マジックみたい!」  ジルに褒められ、天にも昇る気持ちを抑え、リヒトは爽やかな笑顔を浮かべた。 「痛みを失くすように加工してますから、少しじっとしててください」  そう言うと、その針を使い穴をあけ、ピアスをセットする。 「よし、これでよし」 「え? もういいの?」  ちくりとも、さくりともしなかったので、ジルは驚いた。 「はい。もう終わりました。このピアスもさっき作ったんですけど、俺と交信できます。俺に用があるときは俺の事考えてください。俺もジル先輩に用があるときは同じように考えますから」  リヒトはそう言うと、自身の耳にも同じピアスをつけているのを見せる。お揃いですねと、嬉しそうな顔をされ、ジルも嬉しくなった。 「リヒトくん、ほんと、何から何までありがとう」 「いえいえ。こちらこそ眼福です!」 「ん?」 「いえいえ。ハハハ!」  リヒトはジルの笑顔が見れ、ご満悦だった。その時隣室のドニスがやって来た。 「リヒト~、何々~? 俺に何の……」  陽気にやって来たドニスは、いるはずのないジルの姿を見て驚いていた。 「リヒトく~ん! なに連れ込んでるの~?」 「いやいや、この人はジル先輩! 俺の番さん」 「あ、初めまして。ジルです」 「超絶美人だな! こりゃ今までのようにうっかり部屋に来れないな」 「勿論今後は慎重に願いたい」  など、二人は笑っていた。  この二人は親友で、同じ特Aクラス。中等部では寄宿舎の部屋は同室で、今回も隣室だった。その話をし、ジルもうんうんと、頷いた。 「お? 早速独占欲丸出しだな、リヒト」 「勿論! 隅から隅まで俺の印付けとかなきゃ!」  独占欲?  不思議に思い、リヒトを見ると、リヒトは笑って答えた。 「ピアスですよ。それ、俺特製ですから。見る人が見れば、そのピアスには俺の念が見えると思いますよ」  念?  何の念? 「リヒトからはガンガンと、脳に直接話しかけられるんだけど、俺たちには無理でしょう? だから俺たちへは一方通行で、ジル先輩にはピアスで相互交信。ね、リヒトの愛が凝縮でしょ~?」  そうドニスに説明され、嬉しいやら恥ずかしいやらで、ジルはまた顔が赤くなった。 「うおっ! ドニス、勿体ないから見るな!」 「んな、無茶な!」 「減るっ! お前が見るとジル先輩の何かが減るっ!」 「何が減るんだよ。なんも減らね~よ」  ドニスは笑った。リヒトはジルを抱きしめてドニスから隠した。先程の話の通り、ジルはリヒトの腕の中にすっぽり収まった。  ジルの顔に当たるリヒトの胸から、甘い匂いが鼻腔に思いきり入ってくる。くらくらするほどの甘さに、ジルの意識は次第にぼんやりとしてきた。 「ああ、そうだ。ドニスにお願い! シメオン先生に飛び級してジル先輩と同クラにしてって言って来て!」  リヒトのお願いに苦笑しながらも、ドニスは請け負った。 「了~解! 早速囲い込みか? さすが童貞花畑だな!」 「童貞花畑は余計だ!」  ハハハっと笑いながら、ドニスは出て行った。 「ふう。ああ、ジル先輩、もう大丈夫ですよ、って、ジル先輩?」  リヒトは、ドニスが部屋から出て行ったのを確認すると、ジルを囲っていた腕の力を緩めた。しかしジルが、リヒトの服を離さない。 「ん」  ジルは、離れたくないとばかりに、リヒトの服を握っている。リヒトの甘い匂いにあてられ、ジルはくらくらとしていた。すんすんと嗅ぎながら、ぎゅっと抱き着く。 「……ジル、先輩?」 「ん」  いい匂い……溶けちゃいそう……  ジルは更に顔を埋めてきた。リヒトはおろおろと、緩めた腕を彷徨わせたが、意を決してぎゅっと抱きしめ返した。 「先輩……ジル先輩。大好きです!」 「ん……僕も、好き……」  ジルの呟きが耳に入ったその瞬間、一気にリヒトの下半身に熱が凝縮された。 「ぐぅっ!」  このまま押し倒しそうになる気持ちを、リヒトは理性を総動員して押さえ込む。すると、ジルが体重をかけ、身を預けてきた。 「ジル先輩!」  いいのか? このまま、流れに乗ってもいいのか?  リヒトはそう思ったが、意を決して体を離しジルの顔を見た。 「え? 先輩?」  くったりとリヒトに身を預けて、ジルは眠っていた。しゅるしゅるしゅる~と、効果音がつく勢いで、リヒトの力が抜けた。  まあ、そんなに都合よくいかないか……。  いやあ~、焦った……押し倒さなくて、ほんとよかった~……  リヒトは力が抜け、暫くの間動けなかった。気を取り直し、ふぅと息を吐き、ジルを抱えてベッドに向かった。  リヒトは現在165cmに届かない位だが、本人はまだまだ伸びしろはあると、大きくなる気満々だ。今はまだ逞しい感じではないが、恐らくは成長期と共に、αらしい体格になると思われる。リヒトは、己の番と思うだけで、ジルの重さも感じないくらい軽々と運んだ。  一方ジルは、スヤスヤと至福の時間を過ごしていた。リヒトの甘い匂いを胸いっぱい吸い込んでから、次第に意識がぼんやりとしてきた。そのまま吸い込まれるように眠ってしまった。  今まで張り詰めていたものが、切れそうになっていたが、リヒトやシメオンの存在で、繋ぎ止めることが出来た。弱っていた心に、リヒトの温かさが染み渡っていた。己の番の温かさを感じ、安堵のため眠ってしまっても、無理のないことだった。  リヒトは眠るジルの顔を微笑ましく思いながら、暫く見つめた後、ジルの荷物を自分のクローゼットや棚に直した。そして、ドニスの帰りを待った。
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