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第13話 11、本当に僕の魔法?

「えっと、僕は魔法は……」  ジルがそう言うと、リヒトは笑って答えた。 「簡単に説明すると、俺はジルの魔力で自分の魔力が上がる。ジルは俺の能力を引き出すってこと。まあ、ジルの魔法は、今見て思っただけだから確証はないんだけどね」 「リヒトくんの能力を引き出す……? 僕にそんなことが出来たの?」  半信半疑のまま、リヒトに尋ねる。 「今、俺のこと考えてって言ったでしょ。要は俺との魔力の繋がりが分かればいいって事。俺もそうしてる。俺はジルの流れが分かるから、もう触れなくても出来るかな。直接触れた方が強力だとは思うけどね」 「……なんか凄いね……」 「そうだね! ワクワクするよ。光は他の属性がないと扱えないのに、いきなり光だろ? やっぱりジルは凄いよ!」  リヒトは目を輝かせて言った。 「僕じゃなくて、リヒトくんが凄いんだよ。その発想が僕にはないから」 「いやいや、ただの思いつきだから! じゃあ、他のもやってみる?」  ジルにそう促すと、ジルはこくんと頷いた。 「魔力の流れがあるから、それを感じて?」 「うん」  なんとなく分かるような気がして、ジルは集中する。 「何がいいかな、じゃあ、水。水の事でジルが思うように考えて。何かあっても俺が止めるし」 「……うん」  ジルは水と言われ、ジルにとっての水を思った。  ポチョン ポチョン。 「あ、かわいい! やっぱりジルはかわいい! 見て」  ジルが見ると、リヒトの手に水があった。 「?」 「今、雨が降った。違う?」 「そう。でも、これ……」  二滴の雫。これが雨とは。  ジルはちょっとへこんだが、二滴でも雨は雨。今まで出来なかったのだから、二滴でも十分だと思った。 「っていうか、ジルは初めての魔法だよね。直ぐに使えるだけでも凄いんだよ」  リヒトに褒められ、ちょっと嬉しくなった。 「うん。そうだね。ありがとう」  地の魔法で小さな花。  火の魔法で小指の先程の明かりのような火。  風の魔法で鼻先を擽るような、無風のようなそよ風。  僅かだが、ジルは初めての魔法を出すことが出来た。本当に僅かな魔法だったが、リヒトの力で魔法を使うことが出来、ホッとする。 「ねえ、ジルは今キツイ?」  そう言われ、自分の調子を思ったが、全く変化はない。 「ううん。全然大丈夫。変わりないよ」 「さすが!」 「どういうこと?」 「だって、5属性の魔法を使ったんだよ。普通は初めてなら魔力の渇望になって、ヘロヘロだよ。でもジルはへっちゃら。ジルの魔力は恐らく底なしかもね」  うんうんと頷きながら、リヒトは一人納得している。慌ててジルは否定する。 「そんなことないよ! だってあのレベルだよ? あんまり魔力使ってないんだよ、きっと」  ちっちゃなちっちゃな魔法だから、使う魔力が少なかったと伝えた。しかしリヒトは、ハハッと笑って一蹴した。 「いや、そんな話じゃないから。練習すれば思いがけないことになるかも! ワクワクする! だから、とにかく俺の部屋に戻ろう?」  リヒトの言葉に、ジルはハッとする。 「リヒトくん、その事なんだけど……」  やっぱり同室はと言いかけて、慌てるリヒトに遮られる。 「いやいやいや! 他の部屋はダメ! 絶対ダメ! 俺が無理!」 「え?」  凄い勢いで言われ、ジルは吃驚した。 「ジルは俺の部屋! 俺の部屋はジルの部屋! わかった?」  そう言われても、ジルは困った。正直、またシャルルに絡まれるのは避けたい。 「えっと……ありがとう。でも僕は、どこか空き部屋探してみるから」  エヘヘと笑って、誤魔化す。 「……ごめん、ジル。聞こえた」 「え?」  ジルは思わず、リヒトを見つめた。リヒトは、ジルに話した。 「ピアス。番になれば多分ピアスなくてもお互いに気持がただ漏れになるから、練習も兼ねてるんだけど、今のままだとジルの感情がダイレクトに入ってくる。今は俺絡みに関してだけどね」 「……もしかして、今の伝わった?」  ジルは、ハッと表情を変えて聞く。 「うん。ごめん」 「……」 「番になれば能力が高い人ほど、今のピアスみたいに、感情が直通になるみたいなんだ。だから必要な交信は相手に送って、相手に知られたくない交信には蓋をする。それもジルは可能だよ」 「そう、なんだ。ごめん、僕こそ嫌な事思っちゃって……」 「ううん、当然だよ。俺だって嫌な思いをしたし。シャルルにはちゃんと説明する。だから俺と来て?」 「……本当にいいの? 僕が行っても」 「勿論だよ! さあ、行こう」  そう言うと、リヒトはジルの手を取り歩き出した。  リヒトは、今までのジルの事について尋ねてきた。正直あまり楽しいことはなかったので、あまり楽しい話ではないが、リヒトはジルの話を遮ることなく、聞いていた。  こんなに人と喋ったのは、シメオン先生位だなと思い、ふと疑問に思うことを尋ねた。 「そう言えば、どうしてシメオン先生を知ってるの?」 「兄貴と同じパーティーなんだよ。それで知ってる」 「お兄さんがいるの?」 「うん。ラオネ・ギュスターヴ」 「あ、知ってる! シメオン先生は、あの有名なラオネさんのパーティーなんだね。知らなかった」 「兄貴の方は結構有名なんだけど、シメオン先生は名前出すの嫌がるからさ」 「そうなんだね。そんな凄い人に時間とって貰ってたなんて、なんだか申し訳ないな……」 「ジルが魔法出来たって知ったら、歓喜の舞でも踊るんじゃない? アハハ!」 「え? シメオン先生の踊り……」 「アハハ。冗談。冗談!」  など話していたら、リヒトの部屋に戻って来た。案の定、リヒトに部屋から追い出されたシャルルが怒って待っていた。 「もう! リヒトったら、なんで僕を追い出すの? 酷いよ」 「酷くない! 何度も言ってるけど、シャルルを番にとは思ってないし、友人以上を求められても困る。それを守れない様なら、今後一切縁を切るよ?」  リヒトは笑っているが、目は怖かった。シャルルはグッと息を呑むが、言い返してくる。 「僕の気持ち知ってて、そんなこと言う訳? なんで無属性の人なんかを番にするんだよ! 僕を番にしてよ」 「いやいや、全くそんな気ないから。迷惑! 友人でいいって言ってたのシャルルだろ? それを守れなくてジルにちょっかい出すなら、俺も考えるよ? 俺が怒ったら怖いの、シャルルは目の前で沢山見てるよね?」  どうする? と聞かれ、シャルルは一歩後退った。 「僕は、諦めないからね! 僕がリヒトの番になるんだからっ!」  そう言うと、走り去っていった。  ハアッとため息を吐き、ジルに向き合うと、苦笑しながらリヒトは言った。 「毎度毎度、あんな調子。正直、兄貴が番ってからΩたちは俺に来るんだけど、正直何も感じない、だって彼らは俺じゃなくてギュスターヴのαと番になりたいんだよ。それはやっぱり嫌なんだ。俺は俺が選んだ人と番になりたい。だから、ジル。逃げないでね。逃げたら追いかけるから」  最後の方に、何か怖い笑みを見た気がしたジルだったが、ここまで求められ、自分も好きな事を自覚しているので、正直嬉しかった。 「うん。ごめんね、ありがとう。僕もリヒトくんがいいな」  にこっと笑うと、リヒトが悶絶した。 「うっわ~! やばい! マジやばい! 襲ったらごめんっ!」 「え? 襲う?」 「あ、いや、違うくて! いや違わないんだけど、じゃなくて」 「えっと、うん。大丈夫。ちょっと、落ち着こう?」  完璧な感じのリヒトのこんな姿も可愛いなぁ、なんて、呑気に考えていたジルだった。
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