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第17話 第二章・ジルの魔法! 1、さあ、始めよう!

 リヒトはジルの手を取り、笑って言った。 「じゃあ、早速始めよう」 「うん。えっと、何から? かな」  するとシメオンが声をかける。 「先ずは講義をと言いたいところだが、リヒトはジルと実技がいいんだろう?」  お見通しとばかりに、シメオンはリヒトを見て笑った。 「おおっ! さすがはシメオン先生! じゃあ、早速」 「ちょっと落ち着け、リヒト。取りあえず中庭に行くか?」 「それがいい。行きましょう!」  そして五人は中庭へ向かった。 「ジルはとにかく、リヒトの魔力の流れを感じろ」  シメオンが言うと、ジルも元気に返事をする。 「はい」  二人はしっかりと手を握った。  ジルは真剣に魔法のことを考えていた。  魔力の流れ……魔力の流れ……。  たしかに、体中をグルグルと駆け巡っている存在に気付く。  色……? じゃないんだけど、色…、? なのかな……。 「……虹?」  ジルは、リヒトの魔力をそう表現した。 「まあ、その辺は人それぞれだからね。とにかくそれを感じられるようにしよう。そうすると多少は離れていても、相互作用できるはずだから」  シメオンに言われ、ジルは頷いた。 「……なあ、なんか、やらしいな」 「だな。感じるとか……な。しかも『リヒトを感じる』とか、やらしすぎるよな」  など、ドニスとクレスは、ヒソヒソ話をしていると、 「だぁ~! あ~もうっ! やらしくないからっ!」  リヒトが叫んだ。 「こら、リヒト。外野に惑わされるな」  すかさずシメオンの檄が飛ぶ。しかしジルは集中しながら、何やらブツブツと言っていた。 「……感じる……魔力……リヒト……流れ……」  すると、ぽっ、ぽっ、ぽっと、小さな光が現れた。 「……リヒトの力……虹……」  その小さな光が繋がり、小さな一色ではあるが、虹のような形になった。 「ジル、そのまま大きくしてみて」  シメオンがそっと囁くように伝える。 「……大きく……リヒトの虹を、大きく……」  ふわっと膨らむように大きくなる。 「……」  リヒトとドニス、クレスは、じっと見守った。 「そう、そのままイメージして」 「……そのまま、大きく……」  徐々に大きくなっていく。 「……いきなり虹かよ」 「まじ、すげ~な……」  ドニスとクレスが呟いている。どんどん膨らみ、遂には空に一色の虹が架かった。 「……」  ジルは呆然としていた。 「ジルの虹だよ」  リヒトが言った。 「……僕の、虹……綺麗、だね」 「うん。綺麗だね」  ジルは呆然と見つめていた。そのジルをリヒトは見ていた。 「ジルは光が相性がいいかもしれないな。これはもしかすると、もしかするかもな!」  シメオンはほくそ笑んだ。その後は、一通りの属性を試してみた。先日同様、小さな魔法が現れた。 「……なんか、すごいや。リヒトのおかげ。ありがとう」  ジルはにこっと微笑んだ。 「いえいえ」  リヒトも爽やかに微笑んだ。 「……でも、なんで魔法が使えるんだろう……不思議だな」  そうジルが呟くと、リヒトはちょっと誇らしげに言った。 「運命だな!」 「そっか。運命か」 「うんうん」  二人の世界に入ってしまった。そんなふたりを、シメオンとドニス、クレスは、生温かく見ていた。 「まあ、取りあえず、ジルは魔法の出し方が分かったみたいだから、明日からは魔法の種類だな。ジル、疲れてないか?」  シメオンに聞かれて、ジルは自分の様子を確認する。 「ちょっと疲れたけど、大丈夫です」 「そうか。なら問題ないな。じゃあ、お前たち二人も実技、しようか」  シメオンは、ドニスとクレスに、ニヤリと笑った。 「わ~! マジ勘弁してくださいよ~!」 「鬼~!」  シメオンの実技はハードだった。  ドニスとクレスは、ひぃひぃ言ってバテていた。連続魔法はさすがにきつい。しかしシメオンは、体力無尽蔵なαには容赦はなかった。しかし、現状維持でなく、限界を超えた限界に向け、シメオンはビシバシ扱いていた。  二人もそれを分かっていての今なので、口ではいろいろ言ってはいるが、何気に楽しんでいた。 「ジルの魔法がもう少し安定したら、実務訓練行ってみるか」  シメオンの言葉に、四人は喜んだ。 「うわ~! マジで? よ~し、気合入った!」 「実務訓練って、もしかして」  ジルの疑問に、リヒトは嬉々として答える。 「そう! 魔の森だよ。久しぶりだな~楽しみ~!」 「大丈夫かな、僕」 「大丈夫! 大丈夫! 俺がついてるし!」 「そっか。そうだね! 僕、頑張ってみるよ」  ジルがそう言うと、ドニスとクレスも励まし始めた。それを見てシメオンは、ジルにとって言い流れが来たなと、微笑ましく思った。  その後、ドニスとクレスと別れ、ジルとリヒトは2ーFクラスに向かった。ジルはドキドキしていたが、リヒトは相変わらずご機嫌だった。二人で廊下を並んで歩く。  ジルと一緒! ジルと一緒!  さすがは脳内花畑である。ジルと一緒に居られることで、リヒトはかなり舞い上がっていた。 「ジル! なんだか楽しみだね」 「う、うん。でも僕は、なんだか緊張してきたよ」  エヘヘとジルは苦笑しながら言うと、リヒトは爽やかに微笑みながら答えた。 「緊張してるジルもかわいい!」 「え?」 「うわ! ヤバい! 困ってるジルもかわいい!」 「え? ええ~」 「ヤバい! 可愛すぎっ!」  リヒトはジルに抱きついた。ジルは戸惑ったが、リヒトの匂いは安心する。ジルもそっと抱きついた。  暫し二人の世界に入っていたが、無情にも授業開始のチャイムが鳴る。ジルは慌ててリヒトから離れる。 「あ、リヒト、始まるよ」  リヒトは内心、このチャイムに舌打ちしながらも、爽やかな笑顔で答える。 「そうだね。行こっか」  二人は急ぎ足でクラスへ向かった。  ガラガラ。  ドアを開けると皆の視線を一斉に浴びた。 「おお、来たか。皆に紹介しよう。リヒト・ギュスターヴだ」  それを受け、リヒトも挨拶をする。 「リヒトです。今日からよろしくお願いします」  クラスメイトは皆年上ということで、リヒトはお馴染みの愛想のいい爽やかさを前面に押し出す。 「うわ~、噂には聞いていたけど」 「ギュスターヴのラオネ様と兄弟なんでしょ」 「是非お近づきに」  など、口々に聞こえてくる。リヒトはしかし、そんな声にはスルーを決め込む。 「あと、ジルとは番になる予定なので、そこんとこよろしく」  重要な事はしっかりと伝えておく。一瞬教室内が、シーンと静まり返る。ジルはごくっと生唾を飲み込んだ。皆の視線を感じる。やはりと言うか、当然の皆の反応に一気に緊張感が高まる。 「……」  居た堪れず、俯き気味で自分の席に向かう。 「あ、ジル」  リヒトも追いかけるように、ジルの後に続いた。 「さすがは人気者だな、リヒトは。席はジルの隣にしてあるから」  それは今までの報告を受けていた、学園長の指示だった。ジルにはもう後がない。だから少しでもリヒトとの関わりの中で、眠っている才能を開花させて欲しいという配慮だった。  さすがに今回の処置には、教師陣も今までの事を顧みて、ジルの存在を再認識していた。  とはいえ、クラスメイト達には、この特別配慮が納得できない。恨みつらみの籠ったような視線を感じ、ジルは益々俯いて席に座った。
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