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第30話 14、花畑満開です

 早く番になりたい。  噛んで欲しい。 「リ、ヒト、噛、んで!」 「……うん」  まだ発情期ではないから、今噛んでも番にはならない。  でもジルの気持ちは俺と一緒だ。  リヒトは支えていた片手を腰から離し、項にかかる髪をすくう。そしてジルの項に噛み付いた。 「んんっ!」  血が滲んだうなじを一舐めする。 「発情期が来たら、本当に噛むね。今は跡にはならないけど、俺たちの気持ち、だね」  リヒトは嬉しそうだった。その顔を見て、項のジンジンとした痛みを感じて、ジルも嬉しくなった。 「うん。お願、い」 「中には出さないから」  そう言うと、リヒトは腰を激しく打ち付け始めた。 「ああ――――っ!」 「くっ!」  その瞬間、ジルの腰を持ち上げ、リヒトは自身の性器を引き抜き射精した。 「……ん……ふっ……う……」 「ジル……ジル……」  ぎゅうっと痛い位に抱きしめられる。 「……リヒ、ト……好き。大好き……」  ジルも力の入らない両腕で、彼の体を抱きしめた。ジルとリヒトの腹の間で、αの長い射精をする。この精液の熱さに、ジルは身震いした。 「リヒト、中に……」 「うん、じゃあ今度はジルの中に出させて」  リヒトは射精の快感に耐えながらもそう言って笑った。 「うん、その時は、いっぱい……」  そう言いながら、ジルは考える。  リヒトのこの熱が僕の中に入ったら……    その時のことを想像して、ジルの頬は赤く染まった。 「かわいい。ジルは最高に可愛いよ」 「リヒトも! リヒトもかっこいいよ! 最高だよ!」 「うん。嬉しい。ジルにそう言ってもらえるだけで、俺最高に嬉しいよ」  二人はリヒトの射精が収まってから、浴室へ向かった。  そしてその頃、空にはキラキラ光る光がふわふわと舞い踊っていた。分かる人にはわかってしまっていた、この状況。しかも今はまだ授業中。  シメオンに笑われるのはもう少し後のこと。  そしてドニスとクレスにからかわれるのも、あともう少しのこと。  ラオネに脳内で爆笑されるのも、もう少し後の話。  ジルとリヒトは幸せな時間を堪能していた。  浴室では二人は洗いあっていた。当然リヒトの提案であるが、ジルもそれを恥ずかしいが嬉しいと思っていたので、受け入れた。先程それ以上の行為をしているのだから、一緒にシャワーを浴びるなんて大丈夫かと思っていた。  が、そこはリヒトである。煩悩の塊である。そしてつい先ほど童貞ではなくなったものの、相手は煩悩の塊のリヒトである。リヒトはただ洗うだけではなく、こっそりジルの体を堪能した。いやこっそりどころか……ジルは煩悩の塊のリヒトのことを見誤っていた。 「あっ、あっ、そこ、ああん」 「もうちょっと、よく洗わせて?」 「んんっ、あ、待っ、て、んんっ」 「ああ、こっちも洗わないと」 「はあんっ、ああっ」 「ジルの体はすべすべだね。気持ちいい」 「リヒト、も、洗わ、ないと、ひゃあっ!」 「ジルは優しいね。俺のこと考えてくれてるの? 嬉しいなあ」 「んんっ! ふうっ、んんっ、ひゃっ! ああっ!」  可愛いなあ。  本当にジルは可愛い。  こんなに可愛いジルが俺の番だなんて、なんて幸せなんだ!  ……ジルの中、気持ちよかったなあ。もう一回ジルの中に入りたいなあ。  ジルも気持ちよさそうだったし。何回もすれば、ジルの中は俺の大きさ覚えてくれるだろうし。苦しくもなくなるんじゃないかな。  ……ちょっとだけなら、いいかな。  いやいや、今は我慢だ、我慢!  ……そっか。夜はいいのか。  いやいや! さっきの今だと、ジルがきついんだよな。確か受ける方は負担が大きいって兄貴が言ってたし。  よし、明日まで我慢だ!   ……明日の夜はいいよね?  リヒトはジルの体を可愛がりながら、脳内で花畑を展開していた。  シャワーでもジルを堪能したリヒトは、ほくほくでジルの世話をしていた。ジルはというと、至れり尽くせりの状況に慌てていた。 「リヒト! 僕、服は自分で着られるよ」 「そうだよね~」 「えっと、リヒト。あの、僕、自分で」 「やっぱりジルは可愛い」 「え? あ、あの、リヒト。僕は」 「うん。でもジルの服を、俺が着せたいし」 「そう、なの?」 「さ、着れた。じゃあ、少し休もうか」  そう言うと、ジルの服を着せ終わったリヒトは軽々と抱え上げ歩き始める。 「リヒト! 僕、自分で」 「歩けるよね~」 「うん、だから」 「でも俺がジルを抱き上げていたんだ~」 「えっと、そうなの?」 「うん。そうなんだ」 「え、っと、あ、あり、がと」 「どういたしまして」  リヒトから鼻歌まで飛びだしてきて、ジルは羞恥に頬を染めた。  リヒトは歌が苦手なのかな。音階が外れてる…… 可愛い。  ジルはそう思いながらも、リヒトのことを知ることが出来、嬉しくなった。完璧に見えるリヒトの弱点(?)は、若干の音痴だった。しかしリヒトは、そんなことは今は全く気にしない。だって浮かれているから。やはり、リヒトは安定した花畑だった。  ソファーは、リヒトがさっと浄化魔法を使ったので、綺麗になっている。そこにジルを下ろした。そしてうなじのプロテクターも忘れずに。 「おっと、シメオン先生に連絡しとこう」  そう言うと、シメオンに連絡を取る。 「ええ? そうなんですか? いや~恥ずかしいな~。ええ? でも幸せだからいいんです」  リヒトは何のことを言っているのかな。  不思議に思いながらも、目が自然と潰れてくる。 「だってそういうもんでしょう。まあ、そりゃあ授業中だったけど、流れで。いやいや、……」  そっか、そう言えば授業中だったな。  うわっ。僕、授業中に……しちゃったんだよね?  ううっ、恥ずかしい。シメオン先生、なんでわかったんだろう。  でも、恥ずかしいんだけど、……あれ、眠く、なっちゃった……  起きて、から、でも……いいかな……  起きて、から、リヒトに……聞いて……  ジルは眠りに誘われていった。 『おい、お前たち、授業中に何やってんだ。全部バレバレだぞ』 「ええ? そうなんですか? いや~恥ずかしいな~」 『空に満点の星のように、キラキラ、キラキラ光が舞っていたんだぞ。わかる奴は何やってたかわかったぞ?』 「ええ? でも幸せだからいいんです」 『おいおい。うまく隠せよ。一応まだお前たちは正式な番じゃあないんだから。いずれとはいえ』 「だってそういうもんでしょう。まあ、そりゃあ授業中だったけど、流れで」 『流れでって、まあ、わかるが、授業中は自嘲しろ』 「いやいや、そうなんですけどね。ああ、そう言えばどうなりました?」  ジルが夢の中にいることを確認しながら、リヒトはあの後のことを尋ねた。 『もう一度約束させた。ジルには二度と近づかないことをな』 「ふうん」 『物足りなさそうだな』 「まあ、ね」 『まあ、そう言うな。きっちりとお前の父さんが、学園長と相談して制裁するさ』 「そうですね。まあ、俺からもバシッとしなきゃ気は済まないんですけどね」 『そうだな。まあ、そこは明日にでも学園長と相談しろ。一先ずジルの兄であるマグナは、謹慎処分になったから』 「謹慎かあ。甘いなあ」 『一先ずだ。ジルの気持ちも聞かないとな』 「ですね。とりあえず今日はこのまま休みますから」 『仕方ないな。二人共明日は覚悟しておけよ』 「了解です」  ふうっ息を吐きながら、ジルの横に座る。ジルはスヤスヤと眠っている。  そっと彼の黒髪を撫でる。ふわふわの細い髪が、リヒトの手についてくるように感じられ、ジルは髪まで可愛いと、リヒトの心中はまた悶えていた。
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