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第31話 第三章・ジルの魔法! 1、新たなる悩み

 ふわふわ、ふわふわ、いい気持ち。  リヒトが好き。大好きなんだ。  大好きな人に想って貰える幸せ……  ありがとう、リヒト。  夢の中でも、ジルは幸せを感じていた。  しかし、あるはずのものがない。 「……リヒト……?」  傍にリヒトの温かさを感じることが出来ず、不安な思いを抱いたまま、ジルはふと目が覚めた。 「リヒト」  もう一度声をかけてみるが、リヒトはいない。ジルは寝かされていたベッドから身を起こし、ゆっくりと立ち上がろうとした。 「……ぅぅっ」  あらぬところが痛い。この痛みから、先程の行為が思い出され、羞恥に頬を染める。  僕、リヒトとシたんだ。リヒトと初めて繋がった……。  そう思うと、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてきて、体が熱くなってくるのを感じる。その瞬間、空には、こうこうと輝く光が舞い踊り始めた。  リヒトは傍にはいない。それでもジルの魔力は空に解き放たれていた。この魔法学園の空高くに、まるで流星群のような光が輝いていた。  ジルは気付いていない。でも皆の目には、確かにそれを確認することが出来ていた。  リヒトと繋がったんだ。僕はリヒトと……。  そればかりに意識を囚われ、ジルはその思考に呑まれていく。  リヒト。リヒト……。 「ジル」  その時、目の前にリヒトが現れた。 「リヒト」  どこにいいたの? そう問いかけようとしたが、リヒトの遮られる。 「ジル、凄いね。ジルの魔法が空の光になってるよ」 「……どういうこと?」  ジルにはわからない。 「ほら、見て」  リヒトは窓を指さした。 「あっ!」  ジルの目にも見えた。 「ジルが一人で出した魔法だね」 「僕が……一人で……?」  ジルはその流星群のように流れている光を、放心状態で見つめた。 「凄い魔力だね。この量だと俺でも結構魔力が必要だよ」  そんなリヒトの声が、遠くから聞こえているように感じられた。 「……僕の、魔法……僕にも、魔法が……」 「そうだね。多分さっきシたでしょ。それかなあ」  その瞬間、ジルは言葉に言い表せないような思いを感じた。 「さっき、の、リヒトとの、ことで?」 「多分ね。ジルのように番に媒介して魔力を放出するタイプは、あまり前例がないからよくわかんないんだけどね。うわ~、そう考えると、番になった時、どんな風になるんだろう。すっげ~ワクワクする!」  それを聞き、ジルは悟った。  恥ずかし過ぎる!  『僕たちエッチしましたよ』と言ってる様なものではないのか!  リヒトとエッチする度に、こんな風になったら、皆に公表しているようなものじゃないの~?  恥ずかし過ぎるう~!  ジルは悶えた。思わずベッドにうずくまった。 「ジル? どうしたの?」  心配そうにリヒトがジルの横に腰を下ろし、その背中を撫でる。 「……ッチ」 「え?」 「……ッチ、したって、わかっちゃうよ……」 「え? なに? もう一回言ってくれる?」  ジルの呟くような声は、リヒトにはよく聞こえなかった。それを聞き、ジルは勢いよく体を起こして、リヒトを見た。 「だからっ」  そしてジルは叫んだ。 「エッチしたって、みんなにわかっちゃうよ!」 「っ!」  リヒトは驚いた。  ジルが、エッチって言った!  さすがは脳内花畑のリヒトである。驚きの観点がずれていた。 「ジル」  これから(願望として、毎日)するんだから、気にしないでいいよと、リヒトは言いたかった。しかしジルは、リヒトの花畑発言を遮る様に言い募った。 「恥ずかしいよ。僕、恥ずかしい! エッチの度に、皆にこんな風に知らせるのって、恥ずかし過ぎるよ」  真っ赤な顔して、泣きそうになりながら自分に縋ってくるジルに、リヒトはまた欲情しかけていた。 「ジル、大丈夫だよ。(これから毎日するんだから)そのうちコントロールを覚えるよ」 「だって、リヒト。そのうちじゃあ、その間はこんな状態なんでしょ(コントロールできるまではエッチできないよ)」 「大丈夫。(毎日していればそれが当たり前になるんだし)慣れるよ、(皆が)」 「本当?(エッチしないことに慣れるの?)」 「うん。本当に(毎日エッチするから皆が慣れるよ)」 「そっか(エッチしないことに慣れるんだ)」 「そうだよ。だから大丈夫だよ」  ジルはホッと息を吐いた。リヒトはそんなジルを温かく見つめた。  ジルが毎日エッチしてもいいって言った!  今のやり取りを、リヒトは違う方向に喜んでいた。  確かにリヒトは言った。そのうちコントロールを覚えるから大丈夫だと。  確かにジルは答えた。その間はこんな状態なんでしょうと。  コントロール覚えるまでの間は、エッチする度に光の魔法を放つということだ。リヒトは、エッチする度にジルが魔法を放ってしまうが、そのうちコントロールを覚えるから大丈夫。そうジルに言ったつもりだった。  それにジルは同意したと、リヒトは受け取った。それはリヒトにとって、ジルが『毎日シてもいいよ』と言っているようなものだった。  一方ジルは、毎日エッチをすることが前提ではなく、コントロールを覚えてからエッチすると受け取っていたのだ。だから、コントロールを覚えるまではエッチをしないと理解したのだ。  微妙だが、大きなずれを抱えたまま、二人は違う方向に納得した。まあ、花畑のリヒトにかかれば、そんなずれはあまり大したことはないのだが。  さて、その後の二人はというと、ジルの光が収まったのを確認して、一度学園長の元に向かうことになった。  今回のことも含め、今後のことも相談する必要があったのだ。  そしてジル自身も、学園長にお礼を言いたかったこともあり、直ぐに学園長の元へ向かうこととなった。 「ジル、ヒールかけておくね。無理させちゃってごめんね」  カクカクと微妙な動きのジルに気付き、リヒトは回復魔法をかけた。痛みが薄れていく。 「ありがとう、リヒト。なんかすっきりしたよ」  ふふっと笑ってジルは答えた。 「でももう大丈夫だから。(毎日するからすぐに慣れるよ)」 「そっか。(コントロールを覚えるまで、エッチは控えるから)大丈夫なんだね」  二人で見合って笑いあった。  そしてリヒトの移転魔法で、学園長の部屋の前に移動した。  何度経験してもジルはまだびっくりしていた。目を見開いて驚いているジルを見て、またリヒトはかわいいなあと花畑を咲き誇らせていた。  トントン。 「リヒトです。入ります」  そう言いながら部屋へ入る。ジルも後に続いた。 「ジルです」  そう言って迎えてくれた学園長は、誰かに似てた。 「あれ?」  思わず口を突いて出た言葉に、ジルはハッとした。 「す、すみません」  慌てて謝る。 「ああ、構わないよ。座りなさい」  そう促され、リヒトと一緒に学園長の対面にあたるソファーに座った。 「ジルにリヒトか。初めましてかな、ジル」  そう学園長は言った。 「は、初めまして」  その姿に戸惑いながらも、初めてでいいんだろうと思いながら、おずおずとジルは言った。 「学園長、今回も含めいろいろお世話になっています」  それを聞き、学園長は微笑んだ。 「いやいや、気にしないで。こちらの方こそいろいろと行き届いていなくてすまなかったね」 「いえ。学園長のおかげで、ここでジルに会うことが出来ました。感謝してもしきれませんよ」 「そうか。それはよかった。二人は運命の番だね。話は聞いているよ。ジル、本当によかった。これからが楽しみだな」  学園長はそう言って、ジルに微笑みかけた。
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