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第41話 11、やっぱり出ました?

 俺はいい。俺はジルとの子どもだから今すぐにでも欲しい。  でも、ジルは? ジルはどうなんだろう。  ジルは魔法を頑張りたいって言ってた。  頑張りたいときに、に、に、に、妊娠~?  ああ~っ! 俺、ほんと、何やってんだよ!  避妊用のピルは24時間以内でなければ効果を発揮しない。もうすでに24時間は経っている。リヒトは、どん底まで落ち込んだ。  でも、ジルが困るって言ったら、俺が育てればいいか。  妊娠中は俺がフォローして。  リヒトはどんどん妄想する。さすが花畑である。 『なあ、兄貴、聞こえる?』  リヒトは脳内で、ラオネに聞く。 『なんだ? ちっとは冷静になったか?』 『うん。ごめん、ありがとう。それでさあ、今気づいたんだけど、俺、避妊、してないかも』 『だろうな』 『兄貴はどうだった?』 『俺は当然、速攻リラは妊娠した』 『だよね』 『まあ、俺の場合は、年齢的にも大丈夫だったからな』 『ですよね~』 『一応、何度も注意は送ったんだぞ。聞こえなかっただろうけどな。お前が物凄い威嚇をしてたから、部屋に入るなんて無謀なことは出来なかったしな』 『はい。すみません』 『まあ、童貞卒業したのもつい最近だしな、お前は。がっついても仕方ないさ。まあ、いいんじゃないのか』 『俺はいいんだよ。だけどジルの気持ちを聞いてなくって』 『そうか。まあ、どちらにしろ、なるようにしかならないだろ。もう24時間経ってるんだ。今更バタバタしてもしょうがないだろう。お前はドーンと構えておけ』 『ドーンとねえ……』 『それが、ジルを守るってことだろう?』 『そっか。うん。そうだね。兄貴もたまにはいいこと言うなあ』 『たまにじゃないだろうが』 『はい、すみません』 『とりあえず、ジルは発情期を迎えたんだから、一週間は籠るだろう? 学園には連絡しているから安心して籠れ』 『何から何まで、お手数おかけします』 『あんまりジルに負担かけるなよ。時々差し入れするから、俺の声、無視するなよ。後、俺が来られないときは、母さんが行くからな』 『は~い』  はあっと大きくため息をし、リヒトはベッドに眠るジルを見た。ジルは先程と変わらぬ体勢で、ぐっすりと眠っている。息をしているのか不安になるくらい、微動だにしないので、リヒトはジルに近づいた。  口元に耳をやり、寝息を確かめる、すうすうと寝息が聞こえ、リヒトはホッとした。そして気付く。  魔法、魔法はどうだったんだろう。  兄貴が何も言わないってことは、大事にはなっていないんだろうな。でも。  リヒトは再びソファーに戻り、ラオネに脳内で話しかける。 『兄貴、ちょっといい?』 『ああ? 俺は今忙しいんだって』 『ごめんごめん。これで最後だから。あのさあ、魔法、どうだった? 大事にはなってないかな?』 『ああ。お前がいきなり血相変えて移転したって父さんから聞いたから、恐らく発情したんだろうと思って、父さんと俺でこの家に特大の結界張ったからな。全く問題はない』 『やっぱ、なんかあった?』 『まあ、流星群が舞い踊ってるくらいだ。あの時の稲妻に比べたら、なんてことはないよ。ただ、お前が噛んだときだろうな、エーテル、出たよ』 『はい~?』 『お陰で俺たち家族は癒しの効果頂いたからな。やっぱ、ジルには素質があるよ。お前のとは違う光だったから、ジルだというのは確かだ』 『そっか~。やっぱ凄いな、ジルの魔法』 『そうだな。まあ番になったってことは、今まで出来なかったことも、出来るようになるのかもしれないぞ。それで妊娠してたら、その効果もなんかあるかもな。ほんと、面白いな、お前たち。じゃあ、俺忙しいからな』 『ああ、ありがとう』  そっか。そっか。うんうん。  リヒトは一人納得していた。そして、ジルの眠るベッドに行き潜り込んだ。  ジルはハッと目が覚めた。隣を見ると、リヒトの寝顔がある。  何とも言えないこの充足感に、番になったんだと感じた。そっとうなじの噛み跡に手をやった。  これが噛み跡なんだ。  込み上げる幸福感に包まれ、思わず笑みが零れる。そして感じる、下腹部の熱。  あれ? なんかお腹の中が熱い。  ああ、そっか、まだ発情期なんだ。僕、発情したんだ。  つい先ほどまで交わっていたことを思い出し、赤面する。  うわ~、恥ずかしい。恥ずかしい……でも、嬉しかった。  思わずリヒトの唇に口づける。 「……んん、あ、れ? ジル、起きた?」  リヒトが目覚め、微笑んでいる。 「うん。今起きたよ」 「体、辛いでしょ? ごめんね、俺、止まんなくって」 「ううん。大丈夫。僕も嬉しかったし」 「ジル~!」  リヒトはやはり、ジルに抱き着いた。 「ジル、大好き」 「僕もリヒトが大好き」  互いに微笑みあう。 「起きられる?」 「うん」  もうすっかり日も暮れ、闇夜の月明かりが、窓から差し込んでる。 「あれ? ねえ、リヒト」 「ん?」 「なんか力、入んないんだけど……」 「ごめん、ジル。俺のせいだ」  苦笑しながら、ジルを抱える。 「え?」 「ヤりすぎた。足腰立たないよな」 「え? 大丈夫だよ」 「ううん。大丈夫」 「リヒト?」  ジルを抱えて、リヒトはソファーに向かった。そこにそっと降ろす。 「何か食べよっか」 「そういえばお腹空いたかも」 「丸一日過ぎちゃったんだよ。もう土曜の夜」 「え?」  ってことは、一日中、リヒトと……。うわ~!!  ジルは悶えた。  ってことは、魔法。魔法はどうなったの? 「ねえ、リヒト、魔法は?」 「ああ。大丈夫。父さんと兄貴が結界張ってくれてたから」  それを聞き、ジルはホッと息を吐いた。 「ああ~、よかった」 「ジルのエーテル、出たって」 「え?」 「確かにジルの魔法だったって」 「え? 僕のエーテル? リヒトじゃなくって?」 「うん。俺のとは違ったって言ってたから」 「……そっか。僕、……」 「でね、番になったから、何かがどうか変わったんだと思うよ。発情期終わったら確かめてみようよ」 「うん」  無属性で、なんの魔法も使えなかった僕が、魔法を使えるようになって、そして暴走して。エーテル使って……。  何とも言えない感情に支配される。すると、先程から感じている、お腹の熱が、ドクンドクンと息吹いているように感じた。  あれ? なんか、なんか言ってる?  そのドクンドクンという熱に意識を傾ける。  え? 大丈夫? 大丈夫って言ってる? 「ジル?」  ジルの様子を見て、何かがあったと感じ、リヒトは声をかける。  もしかして……ああ、そうか。そうなんだ 「うん」  君は。 「ジル、どうしたの?」 「……リヒト、僕、わかっちゃった」 「わかった?」 「ここ」  そう言って、リヒトの手を取り、ジルはお腹にその手をあてた。 「え?」 「いるよ」 「ジル、それって」 「うん。わかるんだ、なんとなくだけど。大丈夫って言ってる」 「そっかあ」 「うん。ねえ、もし、ここにいたら、産んでもいい?」 「ジル、産んでくれるの?」 「それは僕のセリフだよ。産んでもいい?」 「勿論! 勿論俺は産んで欲しいよ! 産んでくれるの?」 「僕だって産みたいよ。リヒトとの赤ちゃんだもん。ほら、この子も嬉しいって。大丈夫って言ってる」 「大丈夫?」 「うん。大丈夫って言ってる」 「そっか。うん。わかった」 「ふふっ」  二人で微笑みあった。 「じゃあ、なんか食べよっか。さっき兄貴が差し入れてくれたから」  そう言いながら、リヒトは立ち上がり、ミニキッチンへ向かう。 「ちょっと温めるから」 「それって」 「うん。母さんが作ってくれたと思う」 「そっか。ありがとう」  二人でその食事を頂いた。
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