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第47話 5、中間テストです!

 そうもうすぐ中間テストが始まるのであった。  今までジルは、どうしても実技で赤点を取っていたのである。魔法が出なけれな実技のテストどころではなかったのだ。  事情が事情だったので、今までは特別措置でクリアしてきたジルであったが、今回は違う。  しかしクレールは、今のジルの魔法の状態を知らないのであった。 「ふん」  そう言ってクレールは立ち去っていった。 「何がしたかったのかな」  今のクレールの行動の意味が分からなかったが、何事もなかったので気にしないように努めた。 「なんだったのかな。絡みたかっただけとか?」 「まあ、気にかけておいた方がいいかもな。前のこともあるしな」  ドニスとクレスがそう言いあっていると、リヒトも頷いた。 「確かにな。ジルには俺の魔法もかけているし、ジル自身が魔法を扱えるんだからいいとしても。前にジルに嫌がらせしていたのはクレール達だったよな」  ふむふむと考えるリヒトに、そして一緒に考えてくれる仲間達に、ジルは感謝の思いを抱いていた。 「うん。とにかくなんにもなかったから、うん。大丈夫。でも、もし困ったときは相談してもいいかな」  首をかしげてそう言うジルに、リヒトはやはり飛びついた。 「ジル! 俺が守るからッ!」 「リヒト!」 「はいはい」 「もう戻ろうぜ」  生温かい視線を送りながら、二人は教室へと戻って行った。シメオンはもう既に研究室に戻っていた。  ひとしきり互いの温もりを堪能した二人は、やっと今の状況に辿りついた。 「中間テストかあ。すっかり忘れてたよ」 「でもリヒトは大丈夫でしょ? 問題は僕かな。実は実技だけじゃなくて……」  科目は英語・数学・国語・理科・社会の筆記に、魔法科もある。魔法の仕組みを理解できているかの科目だ。それに魔法の実技が加わる。  ジルは魔法の筆記はそこそこだったが、他の科目は全て平均点よりも下であった。  勉強はしている。しかし今までは、シメオンとこの学園を出た後の為の、生活科のような勉強もあり、更には投擲の訓練もしていた。  その為、全てを上手くこなすことが、どうしても出来なかったのである。 「大丈夫だよ、ジル。だって魔法の実技は、恐らく大丈夫でしょ。五教科は俺が一緒に勉強出来るし。魔法科は魔法が出せるようになってるから、仕組み自体も理解できやすくなったでしょ」 「そうかな。うん、そうかも。リヒト、教えてくれる?」  教えて? 俺に教えてって言ってる? ジルが俺を頼ってる? 「ジル~!!」 「ええ? リヒト?」 「なんでも教えるよ~!」  なんなら、あんなこともこんなことも教えたい~!! 「リヒト……。ありがとう」  僕の為に、ありがとう。やっぱりリヒトはいい人だな。  若干見当違いな二人であったが、リヒトの煩悩にかかれば何の障害にもならないのである。二人は再び、ひとしきり抱き合った後、シメオンの部屋へと戻っていった。  シメオンと中間テストの範囲の確認をする。テストは2年F組でみんなと一緒に受けている。当然今回もいつものようにクラスで受けることになるだろう。  範囲の確認が済み、今日はこれまでとなったので、ジルとリヒトは寄宿舎に向かって歩き出した。 「五教科がね~、微妙かなぁ」  ジルが苦笑しながらそう言った。 「そっか。じゃあ、休憩してから勉強する?」 「うん。そうする。教えてくれる?」  覗き込まれるようにそうお願いされ、リヒトの心臓はドキドキと激しく高鳴っていた。       「もちろんだよ!」  あんなことやこんなことも教えちゃうよ! 「いつも一人だったから、わからない所がわからないんだ」  えへへと苦笑するジルに、さすがのリヒトもハッとした。 『いつも一人だった』  その言葉を反芻した。  ……また暴走するところだった。  ジルは今まで理解してくれる人がいなかったんだ。そっか。 「取り合えずさ、今回の範囲を中心に勉強しようか。一年の頃の分は追々復習するってことで」  それを聞き、ジルは頷いた。  リヒトってほんといい人だよね。勉強付き合ってくれるって。嬉しいな。 「ありがとう、リヒト。大好き」  そう言うとジルは、リヒトの手をそっと握った。リヒトの心は舞い上がった。必死に自制を試みる。  今の今だろっ! 舞い上がるのは後だ、後っ!  ……でもさあ、ジルに大好きって言われたら、舞い上がってもしょうがないよな。  ジル、かわいいし。俺のジルだし。俺の番だし!  そんな葛藤を見せないように、リヒトは爽やかに微笑んだ。 『早めに花畑をばらしておいた方がいいんじゃないのか』  いつか誰かに言われた言葉が脳裏を過った。  だああ~っ! わかってるって!  でも今じゃなきゃいけないのか?  ジルに嫌われないかな? 優しいからいいよって言ってくれる?  いやいや、ジルが優しいからって、そこは甘えちゃいけないだろう。  変なところで意地を張るリヒト。  リヒトはまだ15歳。多感なお年頃である。  更には好きな人に、自分を良く見せたいという思いも働いていた。できるならば好かれたい。嫌われたくないし、よく思われたい。  しかし、『早めに花畑をばらしておいた方がいいんじゃないのか』という言葉が、あの時思い出した時から脳裏に住み着いている。  ……そうだよな。いつまでも格好つけてるのは、よくはないわな。  よし、いつか伝えよう……今すぐは無理だけど、そのうち  そうリヒトは決断した。しかし本人にとっては一大決心であったが、大したことではない。しかも現時点で、なんとなくジルには伝わっているのであった。  リヒトの爽やかな笑顔の裏には、なんとなく別の何かが潜んでいる。ジルにはなんとなくわかっていた。でもわかっていることに気付いてはいないのであったが。  そんなこんなで、二人は寄宿舎に戻っていた。 「ぷにちゃん! ただいま」 「ぴぎゅっ!」  もう帰って来たのか! よし、朝に決意したことを実行するぞ!  そう思ったぷにちゃんは、ジルをすり抜け、リヒトに飛びついた。物凄く嫌だったのだけれど。 「「え?」」  驚いたのはジルとリヒトである。 「ぴぎゅっ」  どうだ、リヒトよ。これで満足か?  ぷにちゃんは、やり切った感満載になった。しかし。 「ぷにちゃん……」  悲しそうなジルの声が聞こえてきた。 「ぴぎゅ?」  え? 何故だ? 「ぷ、ぷにちゃん!」  慌てたリヒトの声が、ぷにちゃんに聞こえてくる。 「ううん。いいよ。ぷにちゃんはリヒトが好きなんだよ。抱っこしてあげて?」 「ジル……」 「ぴぎゅうううっ?」  えええええっ!  ぷにちゃんは猛烈に困惑した。間違えてしまったようだ。リヒトの黒い視線を感じたくなくて選択した行動が、ジルを悲しませることになったようだ。 「ぴぎゅ、ぴぎゅっ!」  慌ててぷにちゃんは、リヒトの腕をすり抜け、ジルに飛びついた。 「ぷにちゃん……」  ジルはぎゅうっと、ぷにちゃんを抱きしめた。更にはぷにぷにしている。  やはりリヒトの視線を意識した。しかし今回は、黒い視線ではなかった。そのことにぷにちゃんは気付いたのである。
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