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第49話 7、お風呂で

「ジル、お風呂入ろうか」  リヒトがそう声をかけると、ジルはこくんと頷いた。 「うん。ぷにちゃん、お風呂はいろっか」  そう声をかけたが、ぷにちゃんは眠っていた。 「あれ? ぷにちゃん? 寝ちゃったみたい。ふふっ。かわいい」  ぷにちゃんをぷにぷにしているジルがかわいいよ。  と、内心では伝えた。そして思う。  サンキュー、ぷにちゃん。気を利かせてくれたんだよな。  そっとソファーにぷにちゃんを下ろしながら、ジルはぷにちゃんの頭(?)を撫でた。その時、リヒトは薄目を開けたぷにちゃんと目が合った。  やっぱりな。心の友よっ!!  ふっ。若いな。頑張れ、友よ。  一人と一匹は、そう心の中で会話をしていた。  さて、そんなこととは露にも思わないジルであったが、リヒトがご機嫌なので、つられるように笑顔が浮かんでいた。 「なんか恥ずかしいな」 「そんなことないよ。ささ、入ろう」  素早く風呂に勧めるリヒト。脳内の花畑が咲き乱れようとしていた。  恥じらうジル……かわいい。襲いたい。  ごくっ。よし、頑張れ、俺!  リヒトは気合を入れた。妊娠後の初の営みとなるのか、リヒトの気合はから回るのか。今、この瞬間にかかっているのであった。  ジル。ジル、ジル。ああ~かわいい。  見て見て。俺の番、こんなにかわいい!  誰にともなく話しかけるリヒト。既に脳内花畑は、満開に向け咲き誇ろうとしていたのである。 「ねえ、ジル、背中洗っていい?」 「え? 背中? うん、いいよ。お願いね」  ふふっと笑いながらジルはそっと背中を向けた。リヒトはごくっと生唾を飲み込んだ。  うわ~、すべすべの肌。気持ちいい。ヤバいヤバい!!  ジルの背中を、泡立てたソープでそっと撫でる。勿論タオルなどは使わない。当然手で洗う。まさかそう来るとは思っていなかったジルにとっては、不意打ちも同然であった。 「あんっ! え? アッ、リヒ、ト?」 「ジルの肌って気持ちいい」 「え? あっ、あんっ」  泡の感触がこそばゆいやら気持ちいいやら、ジルはゾクゾクと感じてきた。 「かわいい! ジル! ジルっ!!」  段々花畑の開花もマックスに近づいている。リヒトの煩悩は止まらない。 「あんっ、あっあっ」  後から抱き込むように胸を洗うように撫でる。乳首に辿り着き、指の腹で捏ねる様に撫でると、ジルのかわいらしい声が聞こえてきた。リヒトは気を良くし、捏ねたり摘まんだりした。その度にジルの嬌声が漏れる。  徐々に徐々に、リヒトの性器も反応を始める。  ゆっくりすれば大丈夫かな? でも妊娠初期はマズいのかな?  高速で考える。  なにかあったら取り返しがつかないもんな。  そう結論付けると、ジルを抱きしめ、その手を下肢に伸ばした。 「ふうんっ!」  ジルの小ぶりな性器はもう既に立ち上がっている。  リヒト! リヒト。……気持ち、いい……。  リヒトの行動に面食らっていたジルであったが、与えられる快感の波に飲み込まれていく。頭の中がふわふわと蕩けていく様だ。 「ジル、気持ちいい?」 「あんっ! あっ、い、い。気持ち、いいっ、んんっ」 「一緒に、いい?」 「一緒、にっ、ひんっ!」  かわいい! かわいい! かわいい!! 俺のジル!  そっと性器から手を離し、ジルの体を自分の膝に座らせる。互いの性器を合わせ、リヒトはゆっくりと扱いていく。 「今日はお腹の子が心配だから、これで」  そう言いながら、ジルにキスをする。 「んぅ……んんっ……」  吐息が漏れている。その吐息に更にリヒトは興奮する。まさに満開まであと一歩というところまで来ていた。 「ジルっ!」 「ああっあっ、――……っ!」  同時に精を放ち、ジルはくったりとリヒトに身を預けた。その髪に口づける。 「ジルっ、ジルっ!」 「ん……ぅん……」  ジルは蕩けたまま、リヒトに縋っていた。  くったりと身を預けるジルに、吸い寄せられるように口づけるリヒト。ジルはそのキスを受け、更に蕩けた顔を見せた。  かわいい! かわいい、ジルっ! 「ん……ふっ……」  くちゅりくちゅりと唾液の絡む音が耳に響いている。  リヒト……。  思う事はリヒトの事だけ。本来であればここで、いや、ここまでの間で、もう既にジルの魔法が飛び出していたはずである。  しかしそこは、ジルのお腹にいる子が、上手く制御しているのであろう。魔法は飛び出すことはなかった。  まだ見ぬ我が子よ。ファインプレーだ!  リヒトはそれに気付いていたので、心の中でまだ見ぬ我が子に感謝の念を贈った。恐らく届いているであろう。  くったりとしたジルを案じ、そのままリヒトは、今度こそは真面目にジルの体を洗った。しかし敏感になっているジルには、あまりその配慮は功を奏さなかったのだったが。 「んんっ! リヒッ、トッ! そ、こっ!」 「あ、ごめん。でもちゃんと洗っとかなくちゃ。ね」 「あっ、あっあっ」 「うん。もう少し」 「ああっ! そこっ!」 「ここも? 了解!」 「違っ! あんっ!」 「あ、間違った? じゃあ、こっち、かな?」 「そ、そこっ!」 「正解?」 「やあんっ! リヒトぉ……っ」 「ん? どうしたの?」  リヒトはとにかく洗った。ジルはとにかく洗われた。更に更にくったりしたジルであったが、リヒトはホクホクであった。ぎゅっとジルを抱きしめる。 「ジルが好き! 俺のジル」 「ん」 「ジル、かわいい!」 「リヒト、僕も」 「ジル・ギュスターヴ」 「え?」 「ジルの名前。俺の夢だったんだ」  にっこりと微笑みながら、リヒトはジルに伝える。 「そう、なの?」  ジルはきょとんとした表情を浮かべた後、ふふっと笑った。 「うん。そうなの。初めてジルを見た時から、ずっとジルの名前が『ジル・ギュスターヴ』になって欲しいなって思っていたんだ。だから嬉しいんだ」  初めてジルを見かけて、初めてジルと話をした時思ったこと。 「うん。僕も嬉しい。リヒトと同じ名前になれたんだよね」  ジルの中に、出会ったあの頃の思い出が浮かんでくる。時間にすればそう遠い話ではなかったが、ジルの胸には、とても大きなものとして心に残っている。  そして抱き合う。互いの存在を感じ合うように、しっかりと抱き合った。 「これからもよろしくね」 「こちらこそよろしくね」  互いに見つめ合い、笑いあう。  こんな幸せが待っているなんて思ってもみなかった。  いつもジルは一人だった。物理的な困りはなかったが、心は寂しさに覆われていた。  そして偶然にも魔法学校に入学することが出来た。無属性のΩの自分が、何かのご縁で在籍することが許された。  シメオンという恩師にも出会うことが出来た。  そして出会ったリヒトという番。  出会わなければ、ジルは夏が終わった頃には退学し、市街に住んでいたことだろう。そこで出会った人と暮らしていったはずである。  そこにどんな未来が待っていたのかはわからない。今後もわかることはないだろう。  今、ジルの傍には、ジルのことをわかろうと思い、寄り添っているリヒトがいるのだから。  勿論、温かく見守ってくれる頼もしい人たちの存在も、忘れることは出来ないだろう。  だから伝えたい。  あの頃の自分に伝えたい。 『大丈夫だよ。僕は一人じゃないよ。僕の未来には、こんなに素敵なリヒトが待っているんだから。僕が選んだ選択が、正しかったのか間違っていたのかはわからないけれど、安心して。僕は今幸せなのだから』  そんな思いを込めて、ジルはぎゅっとリヒトに抱き着いた。
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