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第50話 8、ジルとリヒトのお出かけin水族館

「ジル、あのさあ」 「なあに? リヒト」  天気のいい日の週末の朝、リヒトがジルを誘っていた。今日は学園の休みの日だ。 「今日、水族館に行かない?」 「水族館? うん。いいよ。でも急にどしたの?」 「兄貴がさ、昨日リラさんと子どもたちと一緒に水族館に行ったって(脳内通信で)聞いてさ」 「そうなんだね。リラさんの体調はいいの?」 「うん。もう落ち着いているみたい。元々元気のいい人だからね。今も動き過ぎないように、兄貴が気を張っているんじゃないのかな」 「そっか。それなら安心だね。うん、じゃあ、行ってみようか」  水族館か。行ったことないなあ。いろんなお魚が泳いでいるんだろうな。  ジルは当然水族館などのテーマパークには行ったことはなかった。なので段々ワクワクしてきた。  あ、ジル、なんだかワクワクしてる?  今ジルは妊娠初期だからたくさん歩くとよくないのかな。  ふふふ……そうか、そうだな。うん、うん。  早速リヒトは、先の先を考え脳内に花畑を咲かせようとし始めていた。 「じゃあ、行こうか」 「うん」  必要な荷物のみを持ち、早速二人は水族館まで移転した。 「ジル、大丈夫?」 「うん。大丈夫だよ」  大きな水族館に到着していた。先ず目に入るのは、大きなクジラのモニュメントだ。 「わあ~! 大きい!」 「そうだね。ここは大きなクジラも見られるよ」  かわいい、かわいい! ジル、驚いてるし。ジルは水族館好きなんだな。  ジルの喜びがリヒトの喜びである。リヒトも嬉しくなっていた。 「じゃあ、行ってみようか」 「うん」  足取りも軽く、二人は手をつないで歩き出していた。  屋外には大きな水槽が設置されており、中にはアシカたちが気持ちよさそうに泳いでいる。 「すご~い!」  子どもの様に無邪気にはしゃぐジルを見て、リヒトも嬉しくなっていた。  こんな大きな水槽が屋外にあるなんて……驚いちゃった。  そしてそのまま進んで行き、エントランスに入った。入場券を購入し中に進むと、様々な魚のゾーンがあった。その一つ一つに感嘆の声をあげるジル。  こんなに喜ぶなんて、もしかして、ジル、初めてなのかな?  ふとそんな思考に辿り着いた。  だとすれば、このはしゃぎようの意味も分かるな。よし!  そしてリヒトは今まで以上の気合を入れた。  暫く進んで行くと、大回遊型の水槽に辿り着いた。ジルは言葉もなく見惚れていた。悠々と泳いでいる魚たちを見ていると、なんだか自分という存在はちっぽけなものなんだなと思った。  魚たちも、こんなに沢山で生きている。  僕もリヒトや皆と生きている。  魚たちもそうだ。合う合わないがあるから、それぞれのゾーンに分かれて住んでいるんだ。  うん。僕の考えは間違っていない。  全ての人に僕という存在を分かって貰わなくてもいいんだ。  でもわかってくれる人だけでいいという、狭い世界は嫌なんだ。  だから僕は伝えよう。分かって貰えるように伝えるんだ。いつか伝わるかもしれないから。  そんな思いで魚たちを見つめていた。リヒトはそんなジルを見つめていた。  この大回遊型の水槽に住んでいるのは共存できる魚たちだけ。  でもそうではない魚は区分けされている。  その水槽をじっと見つめているジル。  ……そっか。うん、なんかジルの考え、わかる気がする。  ジルの様子を見つめていたら、不思議とその考えに辿り着いた。  暫くの間、二人は動けなかった。 「ジル、こっちにペンギンのゾーンがあるよ」 「え? ペンギン? 行ってみたい」  ふっとジルがリヒトを見て微笑んでいた。ジルの様子に気付いたリヒトは、そう言うと、ジルに微笑みかけた。ジルは笑みを浮かべてそれに応えた。  そして二人は少し足を延ばし、屋外のペンギンソーンに向かって歩いていた。 「ジル、ペンギンのゾーン、こっちみたいだよ」 「うん。行ってみたい」  そして二人は少し足を延ばし、屋外のペンギンソーンに向かって歩いていた。ペンギンはスイスイと浮かんでいる。じわじわと泳いでいる様だ。 「ペンギンて、こんな風に泳ぐんだね」  ふふっと笑いながら、リヒトに話しかける。 「そうだね」 「かわいいね」 「かわいいよ」  何がって、それはジルでしょう。  ああ~かわいい。  こんなにはしゃでるジルを見ることが出来るなら、もう毎週でも、いや、毎日でも来ちゃうもんね!!  変なところに頑張ろうとするリヒトであった。さすがは脳内花畑である。 「水族館って楽しいね」  ふふっと笑ってジルは言った。リヒトも笑顔で答える。 「そうだね。楽しいね」  だってジルと一緒だから。ジルと一緒なら俺はどこでも楽しいよ。  そんな話をしながら歩いていると、館内のレストランに到着した。 「なんか食べて行こうか」 「そうだね。お腹空いたみたい」  レストランに入り、案内された場所に着く。 「何食べようか」 「何がいいかな。あ、ガーゴイルの揚げ物がある」 「お。美味しそう。じゃあ、俺も」  ウェイトレスに注文し、食事をする。 「そう言えば勉強、どんな風に進めたい?」 「う~ん。一年の頃の分も半分くらいの理解力かなって思ってる。赤点はなかったんだけど、いい点ではなかったって感じかな」  苦笑しながらジルは言う。 「そっか。でもこれからは生活科や投擲の練習がなくなるから、その分をあてる様にしようか」 「うん。じゃあ、そんな感じでお願いします」 「了解」 「ビシバシお願いね」 「それは無理だよ」 「ええ~。ビシバシしごいてもらわなくっちゃ!」 「ジルに厳しくなんて、俺には出来ないよ~」 「ええ~? じゃあ、ほどほどに厳しく?」 「ほどほどでも厳しくは無理だって」 「ええ~? じゃあ、ちょびっと厳しく?」 「困ったなあ」 「困ったの?」  なんてのほほんと話をしていると、美味しそうなデザートが運ばれてきた。 「ジルは甘いもの好きだったよね。でも今日はこれでいいの?」 「うん。なんだか酸っぱいものが欲しくって」  今日のジルのデザートは、いつものアイスやケーキ類ではなく、柑橘系のフルーツのミニセットであった。 「妊娠すると味覚が変わるのかな」 「そうみたいだね。うん、美味しい。リヒトも食べる?」 「酸っぱそう」 「酸っぱいよ」  ふふっと笑いあいながらデザートを頂いた。  帰りはリヒトが企んでいた抱っこだ。そう。いわゆるお姫様抱っこである。今朝からずっと考えていたことは、これだったのだ。 「ねえ、リヒト。なんか恥ずかしいんだけど」  頬を赤く染めながらジルは俯き気味にそう言った。  ジルの上目遣いは下半身にくるっ!!  かわい過ぎるっ!  これ以上下半身の血流が好調にならないように、リヒトは意識の半分を下半身に集中した。絶好調になれば、恐らくはジルに気付かれるだろう。それはちょっと恥ずかしかった。 「大丈夫。大丈夫。午前中はたくさん歩いたんだから、少しは休まなくっちゃ、ね」 「う、うん。そうだね。うん、ありがとう、リヒト」  優しいな、リヒト。大好き!  ジルかわい過ぎ。あ、笑った。感無量~!!  そして姫抱っこのままリヒトは歩き出した。すると視線の先に、見知った人物がいることを確認した。 「お~い、ドニス、クレス」  なにやってるんだと言いかけて、視線が釘付けになった。  ドニスとクレスが困ってる?  そこには困惑しているようなドニスとクレスがいた。
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