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29.魔力解放作業-2

 ハルがアイテムの小瓶に『体力回復』と心の中で唱えながら魔力を注ぐと、あっという間に小瓶の中は緑色の淡く輝く液体で満たされた。  呆気なさに戸惑ったハルが、本当に『体力回復』の魔力なのか心配になっていると、液体の色が正解を示しているから大丈夫だと魔術師から太鼓判を押された。  体力回復は緑色、魔力回復はピンク色の液体になり、それ以外の魔力は受け付けないように、小瓶には細工を施しているのだと説明を受けた。  それでも心配性なハルの為に、訓練中で疲れの酷い第一騎士団員を伝達魔法で呼び出し、ハルの魔力が込められた回復アイテムを与えてみれば、ここ最近で一番元気になったと証明された。  スキップをする勢いで再び訓練に戻って行った騎士を見て自信を持ったハルは、リバーダルスに凄いでしょアピールをしながら張り切っている。  しかしついやり過ぎてしまい、席を離れていたルピが様子を見に戻って来た頃にはヘトヘトに疲れていた。 「ハルもうそろそろ休憩を……ん?えええええええっっっっっ!!!」  慌てて止めようとしたルピだがハルが作業を終えた小瓶の数の多さに驚いてその場で叫んでしまい、集まって来た魔術師達も喜ぶよりも目の前の光景が信じられず立ち竦んでしまった。 「これ、を全部、ハル一人で、ですか?」 「うん。ちょっと疲れちゃったから休憩してもいいかな……あと空き瓶の追加もよろしく」 「な、な、なんと!!こんな数を一人で、しかも短時間で!!ど、どうぞ此方へ来て休んでください」  ハルのもとで突然動かなくなった魔術師たちはしばらくの間惚けていたが、誰ともなく現実に帰ると再び歓声と拍手が巻き起こり、中には喜びのあまり泣き出すものまで出てカオスな状態になっている。  通常の魔術師に置き換えると一月分の作業を一気に終えたハルは、感心した特別騎士団の仲間からも頭を撫でられ肩を叩かれ揉みくちゃにされた。 「待ってよ!これでも全然数が足りていないんだろ?喜ぶのはまだ早いって」 「いやいや、ハルのおかげで多くの騎士が助かるんです。こんなに嬉しいことはありませんよ」  魔術師用の回復アイテムすら手付かずなのにと有頂天ではいられないハルに、リバーダルスからもよくやったと伝えると、途端に破顔してデレた。 「本当に団長のことが好きなんですね。僕妬けちゃいますよ」  口を尖らせて愚痴るルピは、それでも嬉しさと安堵の方が勝つのか、直ぐに笑顔に戻り皆と喜びを分かちあった。 「いやあ、ハルの魔力は凄まじいものだね。あんなに興奮したのは久々だよ」 「うん。僕頑張ったから……でもちょっと調子に乗りすぎて体がだるいよ」 「あれだけ魔力を使えばそうもなるよ。次からはちゃんとセーブしてね」 「はいよー」  魔力解放作業を終えた特別騎士団員達が、さすがに疲れているのか皆無口で魔術師棟から出てくる中、ハルとテッドは魔力が多い分まだ会話のできる範囲に留まっている。  他にもずば抜けて魔力の高いリバーダルスは、ハルの頑張りによって体力回復アイテムが一気に増え、今後の備蓄量にも光が見えたことを国王に報告する為王宮へ向かっている。 「魔力解放って聞いた時は、お互い攻撃魔法を打ち込んで発散するんだと思っていたんだ。魔石に魔力を注ぐって……まあまあ地味だよな」 「ははっ。僕達が一斉に攻撃魔法の打ち合いをやると、いくら結界を張っても器物破損でとんでもない出費になってしまうよ。攻撃魔法の練習なら廃墟を解体したり、新たに湖を作るときに打つことはあるけどね」 「なんだか……規模がデカイな」  当然のように話すテッドについていけないハルだが、今のところ攻撃魔法の類を使えないでいるのが気になっている。  切羽詰まった状況であったり、リバーダルスが望む時以外は魔術を使おうという気になれないハルは、今もどこかで洗浄師の役割を果たそうと頑張る美琴に申し訳ない気がしている。 (まあ、考えても仕方が無いか。今はやれる事から片付けていこう。で、今夜は何をしてもらおうかな……) 「どうしたのハル?」 「あ、いや……団長にどんなご褒美を強請ろうかなって考えてたりして……ははっ」 「なるほどね。あんまり団長を困らせちゃダメだよ」  言葉の割りには対して心配をしている様子でもなく軽い口調で話すテッドは、褒美の内容が特殊なことなど想像もつかないだろうなと、ハルは自嘲気味に笑った。
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