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耀side 「騙すようなことして、ごめんな」とハルトが柔らかな笑みでほほ笑んだ。ハルトはバンドの要だ。リーダーをしているから、必然的にそうなってしまうのだろうが。  春の太陽ような温かさが、ハルトから感じられる。ホッとできる。ケイが移籍したときも、誰よりも冷静に物事を判断して、バンドのこれからを考えていれくれた。  結局は解散ということで、解決した。青春そのものがHANTERだった俺には、耐えられなかった。解散だなんて。でもそうだよな。俺がもう作曲できなくなってのだから、続けるなんて出来なかった。  言葉も発せられなくて、作曲も出来なくなって。部屋に引きこもって。俺が続けられる状態だったら、新しいボーカルを見つけて再出発だってできてた。  俺が弱いばっかりに。春臣が言いたかったのはソコなんだろうな。脆いから。 「怒ってない。あんな天才を知ってて、隠してたことに長瀬を恨む……かな」 「コレ、見て」とハルトが俺に近づいてくると一枚の写真を見せてくれた。  金髪でだぼだぼのシャツを着て、顔が傷だらけで笑っている写真だ。綺麗な指には、シルバーのごつい指輪して、見るからにヤンキーだ。コンビニの前で座っているような……。 「誰だと思う?」 「え? もしかして……柚希?」 「そ。今と全然違うでしょ? クールでさわやかなイメージの柚希とは別人。でも本来の彼はこっち。高校を卒業して、過去を消してYUZUKIになった。相当な覚悟をもって、僕たちの世界に入ってきたと思うよ……って言おうと思ってたんだけど……怒ってないなら言う必要ないね」  ハルトが苦笑した。ある意味、柚希の秘蔵写真を俺は手に取って、じっくりと見つめた。  長瀬が半殺しに刑にできるだけの腕はあるんだ。こんだけ傷だけなら、相当数の喧嘩をしてきてるはず。  俺は自然に笑みがこぼれて、写真の柚希を眺めていた。今まで、俺の前にいた柚希は演技をしていたんだ。性欲が強いが、それ以外は従順でおとなしいフリを。  本当の柚希は、今日みたいな喧嘩っ早い男の子ってわけ……か。 「これ、貰っていいい? なんか曲ができそう」 「どうぞ。その一枚で曲がかけるなら。長瀬さんが何枚でも提供すると思うよ? 柚希くんの黒歴史写真」  ハルトはクスクスと笑いだした。すぐにハルトが真剣な眼差しになって、俺の手に手を重ねてきた。 「HANTERの再結成をしたい。8年たった今なら、ケイが居た頃とは違う別のHANTERが出来上がると思う。より素晴らしいHANTERが。でも、それには耀が居ないと」 「ボーカルは柚希?」 「もちろん」  ハルトが頷いて、俺の上にある手を離した。椅子を引き寄せて、俺と向かい合うように座る。 「ただそれには問題があって」とハルトが苦笑した。 「『問題』?」 「耀、柚希と今の関係を続けられる?」 「え?」 「身体の関係をってこと。契約時に、柚希と身体の関係も契約してるって、知ってるよ。耀に柚希くんへの恋愛感情はないでしょ? 柚希くんには耀への恋愛感情がある。チーム結成して、柚希くんがYUZUKIとして歌い続けるってことは……続くんだよ。身体の関係も。そこらへんも加味して考えないと。HANTERの再結成は再来年の年明けを考えてる。柚希くんのソロ活動の予定、来年は詰まってるからね。答えはできるだけ早く欲しい」  期待してるから、とハルトが立ち上がって俺の肩にポンと手を置いた。  続く……身体の関係。柚希と。  好きじゃない? 恋愛感情は……。 「ちがう。ハルト……俺は」  顔に熱を持った。脳裏ではさっきの柚希のすぐにイってしまって、恥ずかしがって腕で顔を隠している姿が蘇る。同時に、正常位でしたときに囁かれた柚希の声が耳でこだました。 「答えは決まってるんだ」  立っているハルトを見上げた。ハルトがほほ笑んで、「再結成おめでと」と言い、歩き出した。 「好き……だよ、柚希」  誰もいないスタジオで、俺はつぶやいた。
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