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 象徴だもんな。自分を愛してくれたゆえの儚さ、脆さ。作曲できなくなった桜庭さんを見て、萌えるんだろ? ど変態野郎め。  僕は白井の前を通って立ち去ろうとする。  後ろから白井が腕を回してくると、肘で首を締めあげてきた。 「くっ……」と僕は苦しさから声が漏れた。 「気に入ったんだよ、キミを。その根性が……売りになる」  ぎりっとさらに締め付けをキツクする。僕は抵抗しようと、白井の脛を蹴るが力が弱まらない。もう一度、蹴って白井の腕が緩んだすきに距離を開けようとした。が、首に何かを充てられると、ビリっと電流が走った。 「くそ……や、ろう、が」 全身が痺れて、僕は意識が飛んだ。  少しずつ覚醒していく。気だるい身体に、ガンガンと鐘が鳴り響いている頭が痛い。  なんだよ、こんなときに二日酔いかよ。  ジャラっというチェーンが擦れ合うような音がして、僕はゆっくりと重たい瞼を持ち上げた。 「あ?」と声をあげる。椅子に座っているようだ。手は椅子の背の後ろに回されて手錠をかけられているようだ。数センチしか動かせない。動かそうとすると鎖の音がした。  両足は、椅子の足に縛り付けられている。僕はどうやら、動きを封じられているようだ。  コートと帽子は脱がされている。ついでに上半身も、素っ裸。マンションの一室なのだろう。床張りで6畳くらいの広さがある……が、何も家具はない。暖房器具も無い。  僕はハッとした。暖房器具がないのに、身体が寒くない。むしろ熱い。頭は痛いし、ぼーっとしている。 「薬盛ったな」 「ご名答」と僕の前で、足を組んで座っている白井が嬉しそうに笑った。ヤツは完全防寒備だ。コートに手袋に。マフラーまでつけていやがる。相当、室内は寒いんだ。 「昔ね。耀にもあげていたんだ。あの子に飲む水にほんの少しだけ。私に足を広げてくれるのを待ってたけど……あの子は作曲作業に没頭して、気づかなかったみたいだ。あ。キミには大量に盛らせてもらったよ。正直に話してもらえるように」 「だろうな。素っ裸でも寒くねえんだから。相当だろうな」  ぼうっとする頭に、鞭を打って喝を入れたいくらいだ。ぼうっとしている場合じゃないのに。 「明後日の年末恒例の歌番組までに……薬が抜けきるか……わからないけどね」 「てことは。明後日には解放してくれるってわけだ」 「キミが正直に話をしてくれれば。それと、移籍の件を承諾してくれれば、かな」 「じゃ、明後日の歌番組はドタキャンだな」  くくくっと僕は笑った。別にドタキャンくらいで、焦って契約するような人間じゃないんでね、僕は。  むしろドタキャンになれば、僕は嬉しい。なんでドタキャンになったかの説明で、こいつに監禁されてたって言えるんだから。言われて困るのは、白井だけ。僕は困らない。
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