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「動画をケイから、見させてもらった。柚希が必死に隠していたことを俺の口から話す。それで解放してもらえないだろうか?」 「それだけじゃだめだ。柚希とお前が離れないなら、耀……お前がこちら側に来てもらおうか。だが、耀とは身体の関係だけでいい。事務所に残ったままで。柚希にバレないように、な」  春臣が椅子から立って、俺の背後に回る。ぎゅっと肩を抱きしめられて、「できるだろ?」と耳元で囁いてきた。 『契約』という柚希の声が脳内で蘇る。  俺の浮気は契約違反。柚希はもう、歌ってくれなくなる。歌ってくれないってことは、俺が曲を作る意味がなくなる。 「できない。柚希との契約がある。柚希に歌い続けてもらうには、俺は誰とも身体の関係を持てないんだ」 「……んだそれ?」  春臣の声が一段、低くなった。俺から離れた春臣が、眉を吊り上げていた。  テーブルに手をついて、春臣は悔しそうな表情をしていた。 「柚希は歌うことに興味がないんだ。歌ってほしいと願っているのは、俺だけ」 「あいつ、興味がないって……本当だったのか」 「本当だよ。歌に興味がない。人気になることも。テレビに出ることも。全く興味ないんだ」 「じゃあ、なんで……って耀か」 「そう、俺。俺が望むから、やってくれてるだけ。俺と柚希の間に契約がある。柚希に歌ってもらうために。俺が守らなくちゃいけないんだ。俺はこの先も柚希に歌ってもらいたい。久しぶりだったんだ。曲をかきたいって思わせてくれたのは。若手歌手を育ててきたけど、俺の曲を歌ってもらいたいって思えたのはケイの次に、柚希だけだ」 「私にも曲をくれたが?」 「あれは認めて欲しかったから。あの時は、春臣に愛してもらいたいって思っていたんだと思う。でも、春臣は歌わないだろ? ラブレターを書くのと同じ感覚だったと思うよ。昔すぎて、あの時の感情はもう……忘れたけど」  俺は苦笑した。8年前、自分がどう思っていたのか。あまりよく覚えてない。ちょっと前までは鮮明に覚えていると思っていたのに。  忘れさせてくれたのは柚希なんだ。
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