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柚希side  白井と桜庭さんが、部屋を出ていくと静かにドアが閉まった。ケイが、白井が座っていた椅子に座ると、じっと僕を見つめてきた。 「痛い?」 「感覚がねえ。薬のせいだろうけど」 「そう、か」 「僕はあんたに腹が立っている。ムカついている。でも、今回のことは感謝している。桜庭さんが来なければ、事態は前には進まなかった」 「俺も、白井が仕事をしてくれないと困るから。プライベートはダメ人間だけど、仕事は一流なんだ。そこは認めてる」 「……ってことは、あのおっさんと付き合って、ない?」  ケイが目を丸くしてから、大爆笑し始めた。 「今日だけで2度目だよ。勘違いされるの。長瀬さん、どんだけ。違う。俺と白井はビジネスだけ」 「……てことは、あいつ」 「ずっと耀を想ってる。このチャンスは逃さないんじゃない?」  ちょ……なんてことだ。  僕は縛られている手と足を動かし始めた。薬で痛みが感じない。なら、いまが外し時だろう。多少無理をしても、痛みはわからないんだから。  僕が拘束されている。解放するには、桜庭さんの身体を差し出せと言われれば、きっと桜庭さんは身体を出すだろう。  契約違反なのはわかってて、やるんだ。僕が解放されるほうを優先するに決まってる。  くそっ。早く解かなきゃ。クソ野郎の手が、桜庭さんに触れる前に。  恋人が同じ家にいれば、そこまで暴挙には出ないだろうって思ったが。ケイが恋人じゃないなら……白井はこのチャンスを逃さない。 「暴れないで。外すから」 「は?」 「これ以上、長瀬さんに嫌われたくないんだ。もう……昔には戻れないのはわかってるけど」  寂しそうな顔をしたケイが、足の固定を外しにかかった。 「おじさんと? あんた、おじさんが好きなの?」 「やっぱり。親戚だったんだ。雰囲気が似てるから、そうじゃないかなって思ってた。もちろん、白井には言ってないから安心して。長瀬さんはハルトと付き合ってる。それでも移籍するってチラつかせれば、俺には少しはチャンスがあるかと思ったのに。駄目だった。完全に捨てられたんだ」  似てる? 僕とおじさんが? 周りからは全く似てるって言われないのに。  足が自由になると、僕は立ち上がった。薬のせいか。長時間同じ姿勢でいたせいか。くらりと立ち眩みに襲われる。瞬きを何度も繰り返して、身体が慣れるのを待った。 「ごめん。手錠は無理。白井が鍵を持っているはずだから」 「動ければそれでいい。ありがと」  僕はケイにドアを開けてもらうと、廊下に出た。
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