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耀side 「柚希、大丈夫?」  俺はダイニングから、リビングのソファに行くと倒れこんだ柚希の足に触れた。 「へーき。疲れただけ」と柚希がにこっと笑って瞼を閉じた。 「長瀬、契約違反ってなに」  柚希の無事な声を聞いてから、長瀬に視線を送った。長瀬が春臣に跨ると、容赦なく上に座った。 「柚希を必死に引き抜こうとしたのは、耀からこいつを引き離したかったから。一番簡単なのは、耀を引き抜ければ良かったんだろうがな。こいつには出来ないんだ。俺との契約があって、できなかった。8年前、こいつは耀に薬を盛ってた。そのことに気が付いた俺は、こいつを解雇した。今後一切、耀を事務所から離れるような勧誘をするなって。耀が離れるようなことがあれば、こいつがしてきたことをバラシて社会的に抹殺してやろうってな」 「薬?」  長瀬が俺を見て、「そうだ」とうなずいた。 「ま、俺が気づいてからは、耀には飲ませてないが。そうとは気づいてないこいつは、薬で興奮したお前がいつ足を広げるかと待っていたらしいが」  長瀬がふんっと鼻を鳴らして、踵と春臣のわき腹に蹴りを入れていた。 「うっ」と春臣が苦しげな声をあげると、長瀬が満足そうに微笑んでいた。 「契約違反だな、白井。今の事務所ではもう働けまい。ケイのマネからも外れるだろう。おとなしく今の現状を受け入れて、慎ましく働いてりゃいいものを。8年たって、柚希の存在で焦ったか? そもそもお前には耀は似合わないんだよ、くそったれが」  長瀬が立ち上がり、春臣の背中に足を勢いよく落とした。春臣は床に身体を打ち付けて、激しくせき込んだ。 「さて。一件落着……ってことで、うまいもんでも食って帰るかあ」と長瀬がさっきまでのドスのきいた声から一転、明るい声を出した。 「は? まずは柚希の手当てがさきだろ」 「ああ? そこの寝転がってる奴かあ。薬が抜けりゃあ、大丈夫だろ? 耀のマンションに放置しとけばいいだろ」 「長瀬ぇ?」  甥っ子が傷だらけで倒れているのに、薄情な言葉がポンポンと。おじさんのくせに、心配じゃないのかよ。 「手当てより、こっちが先! 手錠とって」  ぐったりしている柚希が手を差し出してアピールしてきた。 「ああ、忘れてた。鍵な。おい、白井。鍵、だせ」  長瀬が春臣の髪の毛を掴んで、顔をあげさせた。春臣が胸ポケットから小さな鍵を出して、長瀬に渡した。 「ったく、世話のやける子だな、おい。これくらい、手の関節を外して、自力でどうにかしろよ」  ソファで寝転んでいる柚希に近づき、長瀬が文句をたれながら手錠のロックを外した。 「他人事だと思って言いたいこと抜かしてんじゃねえよ。薬で頭がぼーっとしている中で守るべき秘密を黙っててやったんだから、褒めろや」 「さっさと吐いて、解放されりゃあ良かったんだよ。そうすりゃあ、こっちがドタバタと騒いで、無駄な心配しなくて良かったんだから」 「ああ? やんのこら」 「やりてえのか、コラ」  ソファから立ち上がった柚希と、長瀬が額をじりじりとこすり合わせながら、にらみ合った。
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