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 俺はしゃがんでいる柚希と同じ目線まで、足を追って座る。柚希の頭を撫でて、「契約違反したくなかったから」と俺は答えた。 「僕は、契約違反してでも、解放させるために身体を差し出すんじゃないかって思ってた」 「春臣から移籍の書類を突きつけられるまでは、そう思ってた。俺の身体を差し出すだけでいいならって。でも、マネとして移籍にサインしろって言われたら、嫌だって思ったんだ。マネだけだったら、その契約で柚希が解放になれるなら、とサインしてたかもしれない。でも違うんだ。今は……。柚希に歌っていて欲しい。俺の傍で。俺の曲で。ずっと。だからサインはしたくないって断ってた。なら身体をって要求されたけど、歌い続けてもらうには、柚希との契約違反出来ない。俺自身も、柚希以外のヤツに抱かれたくないって思ったから」  柚希が顔をあげると、「ほんと?」と嬉しそうに笑った。 「ああ。柚希が好きだよ。だから契約違反はしたくなかった」  俺たちは見つめ合い、引き合うように互いの唇に吸い付いた。ちゅっと音が鳴り、舌を絡め合う。身体の芯から熱が沸き起こって、さらに次を求めてしまう。 「柚希、キスだけじゃ、足りない。もっと……」 「あ……んぅ、ああ!」と柚希が俺の腕にしがみつくと、全身をビクビクと痙攣させた。柚希が頂点に達したようだ。  恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてイく柚希は、可愛くてたまらなかった。ぎゅっと掴まれた腕が痛かったけど、それよりも柚希がたまらなく愛おしい。早く抱かれたい。 「柚希、ベッドにいこ?」  俺は痙攣の収まった柚希の手を握りしめると、ベッドに誘った。自分から誘うなんて初めてだ。  今まで、嫌だと思っていたかったから。ただ思いたかっただけ。好きになりたくなかった。怖かったから。好きになって、春臣のときのように離れていってしまったら……。自分が傷つくのが怖くて、逃げてたんだ。  とっくに柚希の声に魅了されて、好きになっていたのに。契約で繋がっていれば、関係は壊れないって思ってた。 「ダメ。いまは薬で……。こんな状態で桜庭さんを抱きたくない」  柚希が左右に首を振った。 「大丈夫。俺が抱かれたいんだ」  俺は柚希の手の甲にキスを落とした。ちゅっとわざと音をたてて、吸い付いてからゆっくりと唇を離した。 「壊したくない」 「壊していい」 「無理させたくない」 「無理なんかじゃない」  柚希が首とさらに激しく振った。 「どうなるかわらかないんだ。ただ、こうして勝手にイクだけでいい。そのうちおさまる」 「なら、おさまるまで一緒にいる。傍にいさせて」 「あ、あ……はぁ、んぅ。わか、た。あああ! イク」とまた柚希が痙攣した。
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