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第21話

ユイは碧空の鼻を指先でぎゅっと摘んで引っ張ると 「そういう口、きけないようにしてあげようね」 痛みに顔を歪めた碧空に、ユイは氷のような冷たい声音で吐き捨てると、不意に身を起こしてベッドから降りた。そのまますたすたと遠ざかっていく。 ……怖いっ……怖い、タスケテ……。 碧空は死にものぐるいで身を捩った。これ以上ここにいたら、きっと殺される。 身体の痺れはさっきと同じだ。必死にもがいているのに少しも動けない。でもじっとしてなんかいられない。早く、ここから、逃げないと。 ずりずりと芋虫のように這いずりながら、ベッドの端まで辿り着く。あの男が何処にいるのか分からない。もしかしたら部屋の中にいて、この情けない姿を笑いながら見ているのかもしれない。 でも、恐怖にパニックになっている碧空は、尚も必死に這いずるしかなかった。 「おまえ、何やってるの?」 突然、上から声が降ってくる。 碧空はビクンっと飛び上がって身を縮めた。 「ふーん。そうか、おまえか。さっきからユイがコソコソやってたのって」 声の主はそう言って、碧空の肩に手をかけた。 碧空はひゅっと息を飲み、動かない首を必死に曲げて相手の顔を見上げた。 目が合うと、男は酷薄そうな薄い唇を歪めて笑った。 「へえ……。可愛いね。今度の獲物は随分と上玉だな」 声は似ている。さっきの男、ユイと。 顔もそっくりだ。 でも違う。髪型や服装が違っている。 醸し出す雰囲気も。 「おまえ、名前は?」 柔らかい声音で問いかけてくる。 喋り方も少し違う。 さっきの男とはやっぱり別人だ。 そうだ。さっきユイは、双子の兄貴だと言っていた。この男は、ルカという名前の双子の兄の方なのだ。 碧空が震えながら何も答えられずにいると、男はふふっと鼻で笑って 「薬。仕込まれてるのか。可哀想に。口もきけないの?」 「……た、す…けて……おねが…」 振り絞った声は惨めに嗄れていた。 男は少し驚いたような顔をして 「おまえ……学校で見たことあるな。ユイのやつ、同じ高校の子を連れて来ちゃったのか」 呆れたように呟いて、ため息をつくと、碧空の転がっている横にドサッと腰を降ろした。
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